『やった。』

坂本達『やった。:4年3カ月も有給休暇をもらって世界一周5万5000キロを自転車で走ってきちゃった男』(MIKIHOUSE 2001)を読む。
長い副題にある通り、執筆当時ミキハウスの入社4年目の20代の社員でありながら、4年3ヶ月の有給休暇を貰い、自転車で世界一周した男の冒険記である。ヨーロッパ、ジブラルタル海峡からアフリカを縦断して喜望峰まで、イスタンブールユーラシア大陸を横断し、ブータンを経てハノイまで、アンカレッジから南北アメリカ大陸を縦断して、アルゼンチンの最南端ウシュアイアまでと、小説やテレビの冒険バラエティ番組に出てくるような破天荒な世界一周旅行である。バイクで大陸横断という本は何冊か読んだ気がするが、自転車で世界一周という内容の本を読んだのは初めてだ。しかし、自転車ならではのエピソードは少なく、また旅行の全日程が紹介されているわけでもない。文化も生き方も異なる世界各地の人々との温かい交流がひたすら綴られる。自転車で旅をするコツが知りたいと思い手に取ったので、やや期待とは違ったが、教科書や地図帳を見ても分からない異国の人々の思いやりや気遣いなどが知れて良かった。
あとがきの中で、坂本氏は次のように語る。

 僕にとって、走ることは手段であって目的ではなかった。世界の人たちがどのように生き、何を感じ、考えているのかを肌で知りたかったのだ。また一方で、会社員としてやったこの世界一周は、僕自身がこの先どうやって生きていくのか、生きていけるのかを試す旅でもあった。そういう意味で目的が果たせ、今とても満足している。

ホームページを見ると、坂本氏は現在でもミキハウスの社員として勤務する傍ら、自身が4年3ヶ月の間に感じた感謝を伝える講演会活動を行っている。冒険家とも旅行作家とも違う、一途な人柄が伝わってくる生き方である。

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Link:TATSU SAKAMOTO’S BIKE TRIP AROUND THE WORLD

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