月別アーカイブ: 2015年4月

『自転車旅行主義』

香山リカ『自転車旅行主義:真夜中の精神医学』(ちくま文庫 1998)を数ページだけ読む。
タイトルの通り自転車で各地を走り抜ける旅行記だと思い手にとってみた。
しかし、自転車についての記述は一切なく、可能世界意味論という哲学の小難しい話が延々と続いていく。筆者の言う「自転車」とは、夜勤の当直の間、頭の中の分析哲学の世界を駆け回るための移動と速度の手段であり、メタファーとしての思考のエンジンであった。
頭の悪い私にとって苦手な分野であり、また自転車についての「即物」的なハウツー的内容を期待していた分だけ、期待外れな内容であった。

『快適「自転車生活」入門』

中野隆『快適「自転車生活」入門』(アスキー新書 2009)を読む。
創業80年を超える「老舗」の自転車屋を営む自転車コンシュルジュの著者が、入門者向けのロードバイクの購入方法から、乗車のマナーと安全、日帰り際クイリング術、メンテナンス方法、そしてロードレースの世界の魅力について語る。
今回はロードバイクを選ぶことはなかったが、事故に合いにくいコース取りやオイル塗布の方法など参考となるところが多かった。
生憎、今日も明日も寒の戻りで雨が続いている(明日は雪という予報も!?)が、焦らずコツコツと安全第一にスポーツ通勤を楽しみたい。

チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地

本日、お台場にある日本科学未来館へ出かけた。
先日、芸人の浅草キッドが未来館で催されている期間限定の特別展示「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」で大声を上げて楽しんでいる番組を見て、子どもに少しでも科学技術に触れる機会を与えたいと思い家族を連れて行った。
平日なので首都高は大渋滞かと思ったが、葛西から湾岸線を経由してすんなりとお台場に到着できた。
紙に書いた魚や車の絵がスキャンしただけで、3D映像となり壁いっぱいに動き回ったり、どこにでもある積み木やままごとセットがCGと組み合わさったり、子どもたちは未来の遊園地に大はしゃぎであった。
際限なく成長し続けるもの凄い精密なCG画像や、iTunesのビジュアライザのように音楽に合わせて壁面を所狭しと動く映像など、大人が楽しめる展示もあり、子どもたちの側を離れ、一人映像の前に佇んだりした。

30年前の話になってしまうが、小学校6年生の時に筑波万博に行った時の驚きを思い出した。当時はハイビジョン映像や正確無比な動きをするロボットを見て、大人になったらこんな便利な生活を送るんだろうなと、自分自身の将来への期待と相俟って科学技術の素晴らしさに単純に感動していた。
遠くない将来、子どもたちもこのような遊びに日常的に触れることになるのだろう。

link:チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地

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『グラニーギア/私の自転車物語』

土屋朋子『グラニーギア/私の自転車物語』(山と渓谷社 1996)を読む。
ツール・ド・フランスに魅せられ、ツール・ド・北海道などの日本のレースの立ち上げや運営に携わり、現在は自転車スポーツを中心とした地域開発プロデューサーを務める著者が、自転車レースの魅力を思い入れたっぷりに語る。
ややもすれば、フランスや海外のレースはスケールが大きくて凄いが、日本は自転車文化が根付いておらず駄目だという二元論的な文章が目立つが、馴染みのない国内外の自転車レースの事情は理解できた。

自転車レースと言うと、日本ではまだマイナースポーツという括られ方だが、フランスでは国技ともなっており、ヨーロッパではメジャースポーツの一つに数えられている。3週間あまりに渡って行われるツール・ド・フランスも、1分1秒を争うレースという側面以上に、数千人単位で移動していくステージレースであり、観光業界を巻き込んだルート選定や、マスコミのキャンペーンなど数年単位で運営される一大イベントとなっている。

日本の箱根駅伝に近いイメージなのかとも思うが、裏方のスタッフを含めた総合的なチームとしての力量が試されるスポーツであることが分かった。日本でもてはやされるスポーツは、野球の投手やマラソン選手、ゴルフ選手など、前面に出てくる選手ばかりに脚光が当てられる傾向が強い。昔の合戦における大将同士の一騎討ちの名残なのであろうか。F1レースや自転車レースが日本でも「スポーツ」として普及していくには、もう少し深い面で日本人のスポーツ観が変わっていく必要があろう。

『大人の自転車ライフ』

疋田智『大人の自転車ライフ:今だからこそ楽しめる快適スタイル』(光文社知恵の森文庫 2005)を読む。
著者の疋田氏はTBSテレビ情報制作局所属のTVプロデューサーを務める傍ら、「自転車ツーキニスト」を名乗り
自転車の種類やパーツを解説した写真やイラストはほとんどなく、自転車通勤7年目になる著者の自転車通勤の意義やコツ、また自動車を優遇している社会のあり方への疑義など、自転車生活を楽しむための社会や環境のあり方についての提唱が中心となっている。年齢も近く、ちょうど来週から予定している私と同じ12kmの自転車通勤を実践している著者だったので、すんなりと腑に落ちる話が多かった。
著者は大人が自転車に乗るということについて次のように語っている。

 小学校時代、中学校時代。あの頃、街は「面」としての存在だった。細かい街の構造物の在処を知っていた。小学校の裏山近くにある大きなドブ川はどこに通じているかを知っていた。工場近くの産業道路をずっと行くと、それがいつの間にか砂利道に変わり、その先が入り江に続いているのを知っていた。入り江の橋を越えると小高い丘があった。丘の上には何というか知らないけれど、うねうねと根を張った大きな木があった。その木の近くには友達3人だけの秘密基地があった。
 自転車という少年時代最強の武器は、そうしたものをみんな教えてくれた。
 大人になってしまうと、自分と地域とのつながりが点と線になってしまう。いつもの駅、いつもの近所、いつもの職場、いつもの路線、決まった地点で決まったことをしながら、毎日を過ごしていると、いつしかそれが自分のすべてになってしまう。
 新鮮な発見が、日々失われていく。この街で大勢の人が生活し、それぞれにそれぞれの生態があることを忘れてしまう。
 そういったものを自転車は実に直接的に教えてくれるのだ。

また、後半は趣味や健康といった個人的な枠組みを超えて、都市交通システムへと話が拡がっていく。環境という側面からも自転車のメリットは大きい。一般的な普通自動車で移動するのに比べ、自転車の場合はCO2の排出量が130分の1で済む。自転車こそが車道を走る主役であるような交通体系が求められるのだ。著者は巻頭の言葉の中で次のように述べる。

 自転車、そして、自転車的なもの。それは自らの力だけで風を切って進んでいく快感であり、化石燃料を一切使わない究極のエコであり、クルマも電車もかなわない突出した都心でのハイスピードであったりする。だが、その本質は、世の中をこれ以上煩わしいものにさせるのはやめよう。よりシンプルに生きていこう、という精神なのではないかとも思う。自転車というシンプルな乗り物には、人生をちょっぴり楽しくするための何かが確実にある。その何かは自分だけでなく、社会のためになると私は信じている。

  link:公式サイト「自転車通勤で行こう」(復刻版)