土屋朋子『グラニーギア/私の自転車物語』(山と渓谷社 1996)を読む。
ツール・ド・フランスに魅せられ、ツール・ド・北海道などの日本のレースの立ち上げや運営に携わり、現在は自転車スポーツを中心とした地域開発プロデューサーを務める著者が、自転車レースの魅力を思い入れたっぷりに語る。
ややもすれば、フランスや海外のレースはスケールが大きくて凄いが、日本は自転車文化が根付いておらず駄目だという二元論的な文章が目立つが、馴染みのない国内外の自転車レースの事情は理解できた。
自転車レースと言うと、日本ではまだマイナースポーツという括られ方だが、フランスでは国技ともなっており、ヨーロッパではメジャースポーツの一つに数えられている。3週間あまりに渡って行われるツール・ド・フランスも、1分1秒を争うレースという側面以上に、数千人単位で移動していくステージレースであり、観光業界を巻き込んだルート選定や、マスコミのキャンペーンなど数年単位で運営される一大イベントとなっている。
日本の箱根駅伝に近いイメージなのかとも思うが、裏方のスタッフを含めた総合的なチームとしての力量が試されるスポーツであることが分かった。日本でもてはやされるスポーツは、野球の投手やマラソン選手、ゴルフ選手など、前面に出てくる選手ばかりに脚光が当てられる傾向が強い。昔の合戦における大将同士の一騎討ちの名残なのであろうか。F1レースや自転車レースが日本でも「スポーツ」として普及していくには、もう少し深い面で日本人のスポーツ観が変わっていく必要があろう。