根井雅弘『ケインズを学ぶ』(講談社現代新書 1996)を読む。
経済学史でケインズの『一般論』のレポートを書くために手に取った。
ケインズといっても、新聞やテレビニュースレベルの知識では、不況期において政府主導の公共投資を拡充し、有効需要を増やすことで失業率を減らし、金融緩和を行うことでインフレに導くことを主張した経済学者ということぐらいしか知らなかった。
高校生向けの分かりやすい内容という触れ込みだが、読み込むのに苦労した。前半はある程度の世界史の知識が求められ、後半はケインズの「乗数理論」の説明に展開式が入ってくる。しかし、イギリスの政治に深くコミットし、第1次大戦、第2次大戦を通じて英国の外交交渉に携わり、経済学を一時代の一地域のみでしか通用しない「特殊」な「法則」から、どの時代のどの地域でも使える「一般」的な「科学」へと押し上げた功績を否定できる者はいない。ケインズ理論の詳細はよく分からないままであったが、彼の筋の通った生き方はよく伝わってきた。
著者の根井氏であるが、1962年生まれなので執筆当時34歳である。経歴検索すると、38歳で京都大学経済学部の教授となっている。世の中には天才がいるものだと感心すること一入であった。