仕事の関係で成田に来ている。
本日の夕方少し時間があったので、成田山新勝寺を参詣した。台風11号の影響で、途中通り雨に祟られたが、ゆったりと本堂を回ることができた。
長い歴史はさておき、とりわけ目に留まるような豪壮な建物があるわけではない。しかし、成田駅から車で向かう途中の土産物屋やうなぎ料理屋の数にはびっくりした。おそらくは神奈川県・大山阿夫利神社と同じく、江戸の人々のお清め目的の参拝としてちょうど具合のよい場所にあったのだろう。事実、江戸から成田山に向かう成田街道の途中には歓楽街で名を馳せた船橋宿がある。
疲れが澱のごとくたまった心身の一時の気晴らしにはなった。
日別アーカイブ: 2014年8月9日
経済学史 第一課題
スミスの『国富論』第1編を説明せよ。
序論
Smithは『道徳感情論』の中で,経済人の利己的な行為が自ら企図せざる結果を生むとし,重商主義や重農主義を批判した。「序論」の中で,国民の富とは「国民が年々消費する生活の必需品と便益品の全てを本源的に供給する元本」であると定義づけ,富の源泉は労働であり,富とは消費財であるとした。さらに,そうした富の増大は,分業と生産的労働者の2つの要因で規定されるものである。
分業論
Smithによれば,文明社会における労働生産力の増大の最大原因は分業である。18世紀に入り工場制機械工業が導入されると,全行程を一人の職人に担当させるよりも,作業行程を分割し単純化させた方が労働生産性が飛躍的に高まることが明らかになってきた。Smithによると,当時の英国は「(文明国の)農夫の暮らしぶりが,1万人もの野蛮人の生命と自由の絶対的支配者たるAfricaの王侯の暮らしぶりを凌ぐということは真実だろう」と,分業による生産力の増大によって最貧層の者でさえ豊かな消費財を享受していた。
利己心論
Smithによると,多くの利益を生む分業の原理は,人間本性の「交換性向」と利己心にある。「自分に有利となるように仲間の自愛心を刺激することができ,そして彼が仲間に求めていることを,仲間が彼のためにすることが,仲間自身の利益にもなるのだということを,仲間に示すことができるなら,その方が目的を達しやすい」と述べるように,人間社会は一方乃至他方の博愛心ではなくて,相互の利己心に基づくGive & Takeによって,結果的にWin-Winの関係が成立しているのである。
価値論
Smithは分業と交換が発展していく中で,物々交換の不便さを解消するために貨幣が用いられた過程を分析し,「貨幣はすべての文明国民において商業の普遍的用具となった」と述べ,貨幣は商品の交換価値を評価する価値尺度として機能するとした。さらに,使用価値は持つが交換価値はほぼない水と,使用価値はないが交換価値は極めて高いdiamondの逆説を例に出しながら,交換価値を決定する法則を決定する必要があるとした。
労働価値説
Smithは交換価値の尺度について2つの定義を示している。1つは投下労働説と呼ばれ,「あらゆる物の実質価格,すなわちどんな物でも人がそれを獲得しようとするにあたっては真に費やさせるものは,それを獲得するための労苦と煩労である」と定義付けされる。つまり,その商品の生産に投下された職人たちの賃金に加え,利潤や地代をも含めた労働力の総量である。特に,労働の全生産物が労働者に属するような未開社会では投下労働説の妥当性が見いだしやすい。
もう1つは,支配労働説と呼ばれ,「ある商品の価値は,…他の商品と交換しようと思っている人にとっては,その商品でその人が購買または支配できる他人の労働量に等しい。それゆえ労働は全ての商品の交換価値の尺度である」と定義付けされる。つまり,その商品によって支配できる労働力の総量を示している。近代社会では労働の生産物が一人の職人に帰属されるものではなく,労働者は賃金を,資本家は利潤を,地主は地代を得るようになり,商品の価値は,賃金と利潤と地代の分配の構成で決定されるので,支配労働説の方が商品価値の説明としては分かりやすい。
自然価格論
Smithによれば,一般的に商品の自然価格は,労働量(賃金)・利潤・地代の自然率から構成される。市場に供給される商品の価格が,生産に用いられる価格と過不足なく一致している時に,その商品は自然価格で販売される。これに対して,商品が通常に販売される現実の価格を市場価格と言い,自然価格と市場価格の関係は,商品の供給量と有効需要の割合によって決定される。供給が需要よりも少ない場合,市場価格は自然価格よりも上昇し,供給が需要を下回る場合,市場価格は自然価格よりも下落する。さらにSmithは「自然価格はいわば中心価格であって,そこに向かって全ての商品の価格が絶えず引きつけられる」と万有引力の法則を援用し,自然価格は,各商品の需給均衡,各部門間の利潤率均等化の機能を果たし,そして要素の最適資源配分を達成する価格であると述べる。
分配論
Smithによれば,賃金は労働者の生産物から地代と利潤とを控除した残りの分である。北米や英国など,国民の富の増加が急速な国では,労働需要の増加が大きく,賃金は最低率を大きく越えて高くなる。高賃金は労働者の勤勉を刺激する。そして高賃金は商品価格を上昇させるが,一方で資本蓄積による労働生産力の増進は,生産に必要な労働量を減少させて価格を低下させる。また,資本の増加は,賃金の引き上げと同時に利潤率を引き下げる傾向にある。Smithによれば,資本蓄積の進んだ国ほど,利潤率は低いが豊かである。生産と分配における労働者・資本家・地主の3大階級と,それに対応した賃金・利潤・地代という要素間の相互の収支関係が古典派経済学の基本的な枠組みとなっている。