真壁京子『気象予報士になりたい!』(講談社 2002)を読む。
元日本航空の客室乗務員を経て、気象予報士になった異色の経歴の持ち主である著者の「半自伝的」な本である。タイトルに「気象予報士」とあるものの、前半は短大時代の就活や、客室乗務員時代の研修の裏話、『恋のから騒ぎ』出演の話などで、気象予報士の勉強が始まるのは後半からである。後半は、客室乗務員の仕事を辞めて2半ほどふらふらしていた著者がふと「手に職を持ちたい」と思い、本屋で手に取った転職情報誌に「気象予報士」という見慣れない言葉に出会ってから、テレビのキャスターの仕事を並行して、実際に気象予報士に受かるまでの奮闘記である。分数のかけ算や割り算も怪しい「文系」の女性が、微積分を駆使して、上空5500メートルでの「渦度移流」を計算し、梅雨前線の位置を決定するという専門試験に合格してしまうという小説のような話である。
半分タレント本なのであるが、使用した参考書の紹介など、勉強になるところもあった。著者は以下の参考書をお勧めしている。
- 学研まんが ひみつシリーズ『天気100の秘密』
※小学生向けであるが、基礎中の基礎を固めるのにいい。 - 白木正規『新 百万人の天気教室』(成山堂書店)
安斎政雄『新・天気予報の手引き』(日本気象協会・クライム)
※小学生から中学生レベルにステップアップしたような入門書 - 小倉義光『一般気象学』(東京大学出版会)
※東大の講義でも使われている専門書 - 過去問
※解説の理解が大切
最後に、著者も紹介しているが、航空気象学が専門の中山章氏の言葉が印象に残った。
数式というのは、言いたいことを文章にするのと長くなってしまうから、数字や記号で表記しているだけなんです。数式は解くのではなく、数式が言いたいことを理解してあげればいいだけのことなのです。