日別アーカイブ: 2014年2月10日

『気象予報士になりたい!』

真壁京子『気象予報士になりたい!』(講談社 2002)を読む。
元日本航空の客室乗務員を経て、気象予報士になった異色の経歴の持ち主である著者の「半自伝的」な本である。タイトルに「気象予報士」とあるものの、前半は短大時代の就活や、客室乗務員時代の研修の裏話、『恋のから騒ぎ』出演の話などで、気象予報士の勉強が始まるのは後半からである。後半は、客室乗務員の仕事を辞めて2半ほどふらふらしていた著者がふと「手に職を持ちたい」と思い、本屋で手に取った転職情報誌に「気象予報士」という見慣れない言葉に出会ってから、テレビのキャスターの仕事を並行して、実際に気象予報士に受かるまでの奮闘記である。分数のかけ算や割り算も怪しい「文系」の女性が、微積分を駆使して、上空5500メートルでの「渦度移流」を計算し、梅雨前線の位置を決定するという専門試験に合格してしまうという小説のような話である。
半分タレント本なのであるが、使用した参考書の紹介など、勉強になるところもあった。著者は以下の参考書をお勧めしている。

  1. 学研まんが ひみつシリーズ『天気100の秘密』
    ※小学生向けであるが、基礎中の基礎を固めるのにいい。
  2. 白木正規『新 百万人の天気教室』(成山堂書店)
    安斎政雄『新・天気予報の手引き』(日本気象協会・クライム)
    ※小学生から中学生レベルにステップアップしたような入門書
  3. 小倉義光『一般気象学』(東京大学出版会)
    ※東大の講義でも使われている専門書
  4. 過去問
    ※解説の理解が大切

最後に、著者も紹介しているが、航空気象学が専門の中山章氏の言葉が印象に残った。

数式というのは、言いたいことを文章にするのと長くなってしまうから、数字や記号で表記しているだけなんです。数式は解くのではなく、数式が言いたいことを理解してあげればいいだけのことなのです。

『極限の旅』

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賀曽利隆『極限の旅』(山と渓谷社 1973)を読む。
オートバイツーリングの世界ではよく知られた賀曽利隆氏の若かりし頃の旅日記である。
1971年8月2日から1972年9月10日までの13ヶ月にわたって、アジア9カ国、アフリカ13カ国、ヨーロッパ3カ国、北米2カ国の計27カ国を巡り、汽車とバスで8,000km、オートバイ(スズキTS200)50,000km/(スズキGT380)22,000km、ヒッチハイクで20,000kmの計100,000kmの旅の足跡が記されている。サハラ砂漠をルートを替えて3回も縦断し、インド国境沿いのパキスタンや、イラク、イラン、スーダン、チャドなど当時は戦争状態にあった国を回るというまさに命からがらの「極限」の旅である。しかし、行った先々で心からの信頼し合える友を作り、過酷な砂漠に向かう著者の姿はカッコいい。最後に、「六大陸周遊計画」なる、バイク一つで130カ国を回る壮大なプランが披露されるのだが、実際に彼は生涯をかけて130カ国を回ったのだから、まさに有言実行である。

当時の著者の体当たりの若さが羨ましくあり、自分自身がバイクに夢中だった頃を懐かしく思い出しながらページを繰っていった。
今回も半分勉強を兼ねて、帝国書院の『最新基本地図』を片手に、国別統計などを確認しながら読んだ。4時間近く延々と本に出てきた地名を地図上で確認し、その土地の緯度や高度から気候を考え、その地に暮らす人たちの生活を想像し続けたので、やたら西アジアから北アフリカの国々ついて詳しくなった。
大変恥ずかしい話であるが、私はアメリカの首都ワシントンD.C.が東海岸にあることを初めて知った。これまでずっとロサンジェルスやサンフランシスコのある西海岸のワシントン州にあるものとばっかり思っていた。テレビやインターネットの活字情報だけで分かった気になり、地図を活用してこなかった怠慢の表れである。

読み終えて、ふと19歳の頃、一人暮らしの部屋にKawasakiのマルチパーパスバイクのカタログを貼り、全く見知らない土地を訪れる旅を夢見ていた時分を思い出した。
その頃のことはほとんど他人に語ったことがない。思い出すことも避けてきたため、私自身も忘れかけていたが、この20年間を支えてきた自分の原点でもある。伊勢原や厚木、秦野の郊外や山奥をスクーターで走り回りながら考えた10年後の自分の姿を、20年も遅れてしまったが実現に向けてシフトチェンジしていきたい。

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