本日の東京新聞朝刊の「本音のコラム」に「動物農場化」と題したジャーナリスト堤未果さんの文章が載っていた。ソフトな語り口から、社会状況に話が拡がっていき、そして自己の置かれている立場へ話が展開していく、左派系団体の上品なビラ文のような文章である。
小論文指導の上でも、是非参考にしたい流れである。
G・オーウェルの「動物農場」のアニメが今月から上映される。搾取されていた動物たちが革命を起こし人間を追放、動物だけの農場を始めたが次第に情報操作や監視社会化が進み、気づいた時には一部の特権階級の豚の下、再び搾取されていたという有名な寓話だ。
この映画を初めてみたのは米国留学中で、どれだけ働いても平等に扱われない動物たちの姿に私たち学生は胸を痛めて怒りを覚え、政治学ではモデルになったレーニン独裁政権のレポートを書かされた。一体あの時誰が予想しただろう。時が流れて今度は自分たちの住む社会が「動物農場化」することを。富と権力が一部に集中し、顔のない大量の労働者が這いあがれない仕組みの野か、使い捨てにされる。その仕組みをつくる肝心な政策は教育・情報格差により一部の豚にしか理解できないため、政治に無関心になる動物たちが知らぬ間に決められた法律に従う社会。寓話はそれが現実の向こう側にある限り、私たちを冷静で心優しい傍観者でいさせてくれる。
だが自国にとって「動物農場」がもはやエンターテインメントでなくなった時、人はそれぞれの武器を再び手にするだろう。教育やペン、思いを共有する仲間やまだ失われていない一票の力。革命は一夜で消える炎ではない。半世紀たって豚たちの顔は変わり、私たちは試され続けている。