日別アーカイブ: 2008年12月4日

『童貞』

酒見賢一『童貞』(講談社文庫 1998)を読む。
なにやらいかがわしい内容を連想させるタイトルであるが、出版はフランス書院ではなく講談社である。中身はアダルト小説ではなく、中国の神話を基にしたファンタジー小説となっている。
「河」の辺にある男尊女卑の邑に住んでいた美少年の男が、河の女神を犯し、勢いで母娘を殺戮し、各地を彷徨する途中で「江」に一族のルーツを持つ娘と出会い、生涯を共にすることを誓うという大団円で話は終焉する。「作者蛇足」によると、夏王朝の伝説的な帝である禹に纏る神話を基にしているそうだ。ちょうど『古事記』の日本武尊の伝説を読んでいるような読後感を持った。