月別アーカイブ: 2003年7月

『クルマを捨てて歩く!』

杉田聡『クルマを捨てて歩く!』(講談社+α新書 2001)を読む。
北海道の帯広でクルマなしの生活を続ける著者がクルマを捨てることによって、無駄な維持費(一生の間に4000万近くも!)が無くなり、安全な生活圏が確保され、そして子どもの教育にも効果があると提言する。この中で特に道が子どもの遊び場であるという意見が興味深かった。確かに私自身も団地の内の路上で落書きをし、缶けりをし、キックベースを楽しみ、一輪車やローラースケートに乗り、ラジコンを走らせていた。著者は次のように述べる。

子どもにとっては、道こそがもっともよい遊び場だと私は思います。家やお店が建ち並び、いろんな人や物が往来する道自体が子どもには面白いのです。児童公園にも学校の「校庭開放」にもない、遊び場としての決定的に大事な要素を道は備えています。それは、どの年齢の子どもにとっても家のすぐ近くにあり、自由に行き来でき、だから安心できる空間だということです。道は、子ども同士のネットワーク空間です。道が遊び場なら、電話で約束などしなくても、ちょっと外に出れば遊び相手が見つかるでしょう。年齢の違う子ども同士の遊びも始まるでしょう。

確かに渋谷センター街などの繁華街の路上は、10代後半の若者にとって著者の指摘する年齢を越えた遊びの場となっている。しかし10代前半までの小学生の遊び場はここ埼玉でもほとんど見られない。大人から見ればグランドなり校庭で遊ぶのが健全な子どもの姿であろうが、子どもにとっては整備された空間よりも、一定無秩序な路上の方が勝手に他人の庭に忍び込んだり隠れたりする「すき間」が多くて楽しいのだ。横浜郊外の住宅地に育った私自身も小学生の頃は、わざわざ自転車に乗って公園に行くよりも、おもちゃ屋や駄菓子屋周辺や、排水路の周囲で遊ぶ方が刺激があったと記憶している。子ども心に学校の校庭で遊ぶのは大人の管理下で遊んでいるような居心地の悪さがあったのではないか。確かピーターラビットの絵本にも、うさぎの子ども達が農家のマクレガーさんの畑に忍び込んで無邪気に遊ぶシーンがあった。現在私も職場まで3キロ程しかないのに毎日クルマを使っているので、反省することししきりであった。クルマを排除することで現れてくる社会や遊びの中に、実は子どもの成長にとって大切なものが積み込まれていることを頭の片隅でも意識しておきたい。

『「キャバクラ」の経済学』

山本信幸『「キャバクラ」の経済学』(オーエス出版 1999)を読む。
私は寡聞にしてよく分からないが現在の日本の男性を虜にするキャバクラ商法なるものの実態がよく分かった。その不況を知らないキャバクラの集客のポイントは居場所と疑似恋愛だと著者は指摘する。会社では部下と上司の板挟みになり、OLに無視され、家ではごろごろする場所もない男性にとって、みんなが笑顔で迎えてくれ、自分の名前を覚えてくれるキャバクラが自分の「居場所」になるというのだ。そして順調にいくとホステスと本当の恋愛関係や肉体関係に発展するのではないかという期待が、離れさせず飽きさせず客を惹き付ける要素である。ちょうど大学のサークル部室を訪れるOBのような感覚であろうか。キャバクラというとつい性風俗産業の入り口と考えがちであるが、その実態は時間消費型のアロマテロピーなどの癒し産業に近い。著者はドイツの経済学者W.ゾンバルトの「贅沢者や女遊びのためのカネの支出は資本主義を引っ張る需要面での力である」という言葉を引用しながら、今の不況打開の秘策がキャバクラにあると指摘する。大学からサークル部室が消え、会社近くの雀荘が姿を消しつつある中で、こうした放課後型産業はますます希薄な人間関係のすき間を埋めていくことだろう。

携帯機種変

先日携帯を買い替えた。激安通販とポイントを使用したところ3000円で機種変更が出来た。30か月使用した白黒の携帯からカメラ付きのカラーの携帯に替えたのだが、その機能の充実には驚くばかりだ。特にメールやインターネットの使用しやすさと着メロの音の向上が著しい。昨日などは夜中ずっと携帯をいじってしまった(笑)
ネットからダウンロードした画像やメロディを自由に待ち受け時や着信時に使用することが出来るので、自分なりにカスタマイズ出来、他人との差別化が図れる点が人気を集めているのだろう。しかしよーく考えてみるとこうした自分なりのインターフィエスに対するこだわりというのはマックに繋がるものがある。ソニーエリクソンの機種を購入したのであるが、そのアイコン操作といい、画面アレンジといい、効果音といいマックOS7.6の頃のカレイドスコープ(マック用のカスタマイズソフト)そっくりである。マック使っている人間がソニーの機種を買うという説もうなずけるものがある。

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ワンワンランドで

今日は久しぶりに晴れたので、筑波にあるワンワンランドというファミリー向けの犬の動物園に出かけてきた。5時に閉園の施設だったのに、遠回りをしながら着いたのは4時を少し回っていた。しかし1時間もあれば十分に満喫できるほどのこじんまりとしたところだった。犬との触れ合いがメインであるのだが、この暑さでどの犬もぐったりとした様子であった。特にシベリアンハスキーやアフガンハウンドなどは目もうつろに寝っころがっていた。
犬との触れ合いコーナーの風景で気づいたのだが、子どもよりも大人の方が犬との触れ合いを求める傾向が強いようである。子どもは実際に動く動物に対する興味の方が強いので走って追いかけ回す姿が目立ったが、大人の方は直に抱っこして自分の体に引きつけて癒しを求めようとする行動が多かった。現在の日本社会のように、人間関係が希薄になればなる程、人間に無条件になついてくる犬の方がかわいくなるのであろう。一人暮らしのOLや孤独な老人がペットにはまってしまうのも一理ある。

つくばワンワンランド公式サイト

堺屋太一氏の講演会

本日仕事の関係で、堺屋太一氏の講演会に赴いた。
「日本の進路」という演目で、経済を中心に閉塞感を抱えている日本、日本人にエールを送るという内容であった。堺屋氏はバブル以降の経済不況が日本人の教育レベルや礼儀(ジベタリアンの発生)まで影響を及ぼしており、すでに官僚主導の国家運営そのものが崩壊しつつあると述べる。10年間で10人の総理大臣が誕生し、その全てが「改革」をスローガンにしたが、その多くが官僚によって潰されてしまった。また橋本・小渕政権の頃、一瞬であるが政治家主導の改革がなされたが、小泉政権になってまた官僚が力を付けて来たと指摘する。氏はその中で阪神大震災において日本人の秩序の良さ、日本人の魂が残っていたことに着目する。そうした日本人の心をもった国民によって選ばれた政治家や企業が良い意味で民主主義的な行動を取ること、そして個人個人が自分の好きなことにこだわることが日本の進路の源泉であると説く。前半の経済分析は古くさい内容でつまらなかったが、最後の何時間やっても飽きの来ないものこそ、自分が本当に好きなものであり、5年10年かけても自分の「好き」なものを探していくことが大切だというエールは面白かった。