力石常次『なぜ磁石は北をさす:地球電磁気学入門』(日本専門図書,2002)を読む。
本書は改訂復刻版で、旧版は講談社のブルーバックスに入っていた本である。地軸と磁軸がずれていることはよく知られているが、では実際に磁軸がどうして、どのように動くのか、観測結果を元に丁寧に説明されている。地球の磁場は過去7600万年間に171回も反転しており、過去360万年の間でさえ11回も逆転している。こうした過去の時期を研究する学問は古地磁気学と呼ばれており、世界中で観測と研究が進んでいる。特に海や湖の土砂や氷河堆積物などは、中に含まれる鉄酸化物がストレートに地磁気の影響を受けるので、火成岩や堆積岩の研究になってくる。物理学と地学が重なる分野ともなっているが、スマートな物理と泥臭い地学というイメージの異なるアプローチが面白かった。