『読ませる二〇〇字文章の書き方』

松岡由綺雄『読ませる二〇〇字文章の書き方:伝えたいことを的確に表現するコツ』(ごま書房 1994)を読む。
400字や800字の文章は比較や考察を通して自分の意見を述べることができる。しかし、200字だと、冗長な言い回しや無個性な常套句を思いっきり省かねばならず、必然的に文章がシンプルになる。著者は200字の文章を練習することで、自分の一番表現したいことを的確に伝える力がつくと述べる。

卒業生へのコメント

『喜望峰』原稿

 三年生のみなさん卒業おめでとうございます。今年も三年生の現代文を中心に授業を担当し、生徒のみなさんから多くのことを学びました。特に、特文・英クラスにおいては、『こころ』『舞姫』『「である」ことと「する」こと』など人間心理、日本社会を抉るような作品を時間をかけて扱うことが出来、現代文担当の冥利につきる一年でした。改めてお礼を述べたいと思います。
 評価の定まった古典と違い、現代文は、答えのない答えをどのように練り上げ、どう伝えていくのか、生徒も教員も試行錯誤する教科です。私自身もこの一年、評論文や小説に、半ば楽しみながら、半ば格闘しながら向き合ってきました。教壇の上で、答えを作るのに(取り繕うのに?)四苦八苦していたことも何度かありました。
 また、秋から冬にかけての推薦入試に向けた小論文では、自分の無教養を歯痒く思いながら、皆さんの意見に自分なりの考えをぶつけていました。
 今後の日本の社会・教育を鑑みるに、大学や専門学校での勉強や仕事上のあまたの判断、引いては人生そのものも、これまでと違って手本の見つかりにくいものになるでしょう。答えのない答えを探す作業は卒業後に必要になってくることです。その中で大切なことは夢をあきらめないことと、自分自身の時間を大切にすることです。
高校時代や大学時代といった青春の一ページは過ぎ去ってしまえば短い時間です。これから浪人する者は前途長く感じているでしょうが、来年の春にはあっという間の一年間だったと振り返ることでしょう。
 しかし、その刹那で感じ得た、ぼんやりとした将来像、社会のあり方というヴィジョンが長い一生を支えてくれるものだと、私自身今更ながら感じています。多くの本を読み、雑多な友人と出会い、深く自分と社会を見つめ直してみて下さい
 「自分とは何か」――一人の人間にとって、一番なじみ深くかつ一番難しい問いを胸に、卒業後の道を力強く歩んでいって下さい。最後に私の尊敬する哲学者戸坂潤氏の言葉を贈ります。

「で問題は、諸君自身の『自分』とは何かということにある。そこが話の分れ目だ。」

『わからなくなった世界情勢の読み方』

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池上彰『わからなくなった世界情勢の読み方』(講談社 2001)を読む。
9.11米同時多発テロのすぐ後に書かれた本で、テロ直後にオサマ・ビンラディン一派に対する戦いを、「新しい十字軍の戦いだ」と口走るブッシュ大統領の単純な世界認識を批判的に取り上げながら、サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』をベースに世界情勢を分かり易く語る。

ブッシュ大統領の語るアメリカ型民主主義か専制的な非民主主義かという二項対立的な世界観は米国に伝統的なものであることを知った。アメリカのトルーマン大統領は1947年3月に「民主主義にもとづく生活か、少数が多数を抑える生活か、そのどちらかを、すべての国民が選択しなければならない」と世界を自由主義という善と共産主義という悪に二分してソ連に対して「封じ込め政策」を実施している。また、ジョンソン大統領は「アメリカの掲げる民主主義は、誰もが望むもののはずだ。それに反対する者がいるとすれば、それは、ソ連や北ベトナムに操られた共産主義者に違いない」と、北ベトナムへの爆撃を開始していく。
コインの裏表で、敵を次々と作り出すアメリカの世界観にはだまされるな〜(ちょっと古いか)

生涯学習について

東京アカデミー編『教職教養』より

千葉大対策 生涯学習について

1 生涯学習の夜明け
 1965年12月、かねて成人教育の在り方について話し合っていたユネスコ成人教育推進国際委員会で、ポール・ラングランが「education permanente」という全く新しい教育理念を提案した。後にまとめられた『生涯教育について』の中で、彼は「教育は、児童期、青年期で停止するものではない。それは、人間が生きている限り続けられるべきものである」と述べている。
 その後この語を英訳するにあたって、オックスフォード大学のフランク・ジェサップは、「life long intergrated education」とした。このintegratedは、その後の理論構築にも大きな意味を与えた重要な言葉であった。この言葉の意味する「統合」は時間的系列と空間的ひろがりの統合として捉えられた。

縦の統合
→ひとりの人間の一生の各段階で、それぞれに相応しい学習機会が確保される

横の統合
→学習の機会が学校だけでなく、生活のあらゆる場において確保される

2 生涯学習の契機と理念
 生涯学習が提唱された契機については、いろいろな要因がいろいろな人によって挙げられている。その一つとしてポール・ラングランはその著書である『生涯教育入門』の中で次の五つの要因を挙げている。

  1. 産業社会の速さ
  2. 情報化社会の到来
  3. 高齢化社会の到来
  4. 学校教育硬直化の反省
  5. 所得水準の向上と自由時間の増加

 従来の教育観においては、学習の時期は主として児童期・青年期に限定され、とりわけ学校教育システムのなかで年長者が年少者に施す作用とされてきた。これに対置する形で、生涯学習理論は、自己学習を核に幼児・青少年はもちろん、成人・職業人・家庭人・高齢者も、生まれてからこの世を去るまで学び続けることを提示した。さらに、学習の場も、学校・社会教育施設(図書館・博物館・動植物園)・企業等あらゆる所に求められるようになった。これらを統合(integration)した理念が生涯学習である。

3 生涯教育についての戦略
 ☆生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」(1992)

  • 一人一人の学習成果を生かしたボランティア活動の推進
  • 社会人を対象とした体系的・継続的なリカレント教育の推進
  • 時代の要請に即応した現代的課題に関する学習機会の充実
  • 青少年の学校外活動の充実

 ☆生涯学習審議会答申「地域における生涯学習機会の充実方策について」(1996)

  • 社会に開かれた高等教育機関
  • 学校教育と社会教育の融合

 ☆生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす」(1999)

  • 個人のキャリアに生かす(On the job Training,Off the job Training)
  • ボランティア活動に生かす
  • 地域社会の発展に生かす

 ☆生涯学習審議会答申「生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ」
 子どもの「生きる力」をはぐくむためには、家庭や地域社会等で子どもたちに生活体験や自然体験を意図的・計画的に提供する必要があるとし、「当面緊急にしなければならないこと」を提言している。

4 今日の課題
 1.リカレント教育
 今後さらにリカレント教育の体制を整えるためには、教職員のリカレント教育への理解を深めていかなければならない。社会人の要求に答えられるように、広い意味での教育を展開できるよう努力する必要がある。リカレント教育の目的は、職業上必要な専門的・実践的な技術や知識を学ぶことによって、個人の自己実現を目指すことである。
 2.ボランティア活動の課題
 活動領域は多岐にわたっている。今後はさらに企業などによる社会貢献活動や、開発途上国や在日外国人に対する支援などの国際協力の分野での活動も注目されるだろう。

考えておくべきこと

  • ボランティア活動や地域活動に対する経験や意欲
  • 「学ぶ」ということはどういうことか?
  • 「生きる力」に欠ける子どもたちが増えている現状
  • 経済の構造改革が叫ばれる中で、社会人教育についてどう考えるか?

『ニュースの「大争点」』

池上彰『ニュースの「大争点」:世の中のアレコレ、そうだったのか!!』(講談社 1999)を読む。
論の分かりやすさに定評のある池上氏であるが、国際政治から経済、福祉まで端的に問題の背景や要因が解説されており、大変読みやすかった。
海外で起こる紛争についても、冷戦崩壊後、イデオロギーの対立から、近親憎悪的な民族紛争、宗教紛争に移り変わっていく過程が丁寧に解説されており、読者である私自身が一端の評論家になったような錯覚を起こしてしまうほどだ。小論文受験を控えている高校生や大学生に是非薦めたい。