金子史朗『アトランティス大陸の謎』(講談社現代新書 1973)を読み返す。
これまた高校時代に読んだ本である。上記の『失われた〜』とは異なり、プラトンが述べた1万2千年前に大西洋の底に深く水没したというアトランティス大陸はなかったという結論になっている。地質学を専攻する著者らしく、エーゲ海の火山活動に丁寧な分析を加え、プラトンの指摘する理想国家はミノア文明であったと結論付ける。
『失われた文明:一万二千年前の世界』
A・ゴルボフスキー『失われた文明』(講談社現代新書 1972)を読み返す。
ちょうど紀元1万年くらい前に、『創世記』が伝えるノアの大洪水が実際にあり、それ以前にあった高度な文明がまさしく水泡に帰したのだと述べる。そして、旧世界の英知がピラミッドやインカ帝国のマチュ ピチュの建築に役立ったという。古代の文献を手に遺跡探しに出かけたくなるような入門書となっている。
『女子少年院』
魚住絹代『女子少年院』(角川Oneテーマ 2003)を読む。
全国に9箇所しかない女子少年院の現状と課題を提示する。12年間の法務教官としての矯正指導の体験から、犯罪を起こしどんなにひねくれた少年でも、真剣に本音で向き合えば、必ず子どもは心を開いてくれるという美談調な教育観が展開されている。徹底した性善説に立った上で、受容的な関わりと教育的な関わりのバランスが少年院教育においても、学校教育においても求められると述べる。しかし、具体的な提言もなく、凡庸な教育論に終わってしまっているのが残念だ。
『和田式書きなぐりノート合格法』
和田秀樹『和田式書きなぐりノート合格法』(学研 1993)を読む。
受験技術や社会人教育についての著書も多い和田氏が、現役高校1、2年生を対象に受験のノウハウをまとめている。単に板書を丸写しにするだけのノート作りには何の意味ないと断言した上で、自分なりの理解の過程や注意事項をまとめたノート作りを提案する。そうした自分なりの理解の仕方を併記したノートを作っていくことで、自分の得意な分野、不得意な分野が見え、自分の勉強のペースが作りやすいのである。「ポートフォリオ」的に自分の現状を客観視するためのノートを作成することで、受験に対するいたずらな不安も消えていくというのだ。ノートのまとめ方について具体的な作成例も紹介されており、受験生にお勧めしたい本である。
『ナノテクが日本を救う』
池澤直樹『ナノテクが日本を救う』(講談社 2002)を読む。
原子や分子の大きさを表すための10億分の1を意味する「ナノ」レベルの技術開発を何とか素人が理解できる程度に解説している。10億分の1というと、地球がビー玉のサイズになってしまうほどの小ささである。これまで半導体や光学技術は徹底して小さくすることで技術革新を図ってきたが、すでにそうしたトップダウン式の微細化は限界が生じているという。今後は原子や分子といったパーツを組み合わせることで単分子トランジスタやナノ粒子を利用した材料の開発が求められる。そのようなボトムアップ式の原子や分子から世界を見ると、すべては原子の操作で動いているということが分かる。そうなると現実では画然している材料技術、情報技術、バイオ技術の先端技術の全てが原子のレベルで統合されるようになる。
日本では大学の学部のレベルで理学、工学、生物学、医学でタコ壺型に研究が分割されているが、50年後には「ナノテク学部」に全て統轄されてしまうのだろうか。

