介護保険制度は,これまでの高齢者福祉サービスと高齢者保健,医療,福祉サービスを再編成し,負担と給付が明確になる社会保険方式により,少子化によって家族介護が困難になっている中,社会全体で介護問題を担う制度を創設し,総合的な介護サービスを利用者の選択によって利用できるようにしようとするものである。また,介護保険法においては要介護状態になった者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」必要な介護サービスを提供することを目的としてあげている。
介護保険自体の実施主体は市町村であり,寝たきりや認知症などの「要介護者」状態,または介護が必要となるおそれがあり日常生活全般のサポートが必要な「要支援者」状態の65歳以上の被保険者に対して保険給付がなされる。また,筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病のような特定疾病のある40歳以上の被保険者にも給付がなされる。その場合要介護状態にあるかどうか,その介護の必要の度合いを確認するために,被保険者は市町村において要介護認定の申請を行なう。そこで軽度の要支援状態から,重度の要介護状態の6段階に分類される。
次にサービスの利用にあたって,サービスを計画的・効果的に提供していく仕組みとして,指定居宅介護支援事業者に配置されている介護支援専門員による介護サービス計画(ケアプラン)が策定され,利用者のサービスの選択と利用を支援することとなる。その際,介護支援専門員は計画を策定するにあたって要介護者の心身の状況や日常生活動作,家族の状態を分析しながら,多様なサービス計画を提供することとなっている。
介護サービスは,大きく訪問介護やデイケア,ショートステイなどの在宅介護と,老人施設や老人性認知症疾患療養病棟などの施設サービスに分けられる。しかし,近年の地域での自立生活支援推進の流れを受け,在宅での介護サービスの充実が図られている。
いずれのサービスを利用するにあたっても,費用の1割の利用者負担が決められている。そして,その財源は,40歳以上の国民が支払う介護保険と国や都道府県,市町村の公費負担で成り立っている。しかし,少子高齢化によるアンバランスな人口構成により,財源の確保は難しく,若年層に負担のしわ寄せが来ている。また,利用者の自立が向上したにも関わらず,要介護状態の度合いが固定化され,保険給付額の不必要な増加も指摘されている。
今後益々民間企業の競争による介護サービスの多様化が臨まれるのは間違いない。しかし,安易な企業任せの介護認定がまかり通っては介護保険制度そのものがパンクしてしまう。団塊世代が65歳になる今後を鑑み,介護支援専門員を大幅に増やすとともに,厳正な認定を行なえるような人材の育成が求められる。