日別アーカイブ: 2025年8月17日

『EUの地理学』

佐々木博『EUの地理学』(二宮書店,1995)をパラパラと読む。
大学のテキストで使っていたのであろうか。ヨーロッパ共同体(EC)の成立に始まり、地形や気候、植生、言語、宗教、第一次・第二次・第三次産業のあらましが教科書風に説明されている。ちょうど地理探究の教科書の地誌の項目の深掘りのような内容である。

スコットランドは北大西洋海流の影響で降雨量が多い。熱帯低気圧(台風)が来ないので、激しく降ることはないが、降ったり止んだりが続く。偏西風の影響で西部や高地で雨が多くなる。ゴルフ発祥の地にふさわしく、牧草や芝草がたくさん生い茂っている。また、夏季に成長した草が気温が低いため腐食せず、そのまま炭化してビート(泥炭)を形成することになる。ビートは夏季に掘り起こして乾燥させ、家庭用の燃料としたり、ウイスキー醸造用に使われる。

イタリアの降水量は平均830mmほどで日本の約半分である。イギリス西部の年間降水量は1000〜2000mmとなっている。アルプスの南北の気候の違いは、「アルプス以北の木の文化、アルプス以南の石の文化」という言葉で例えられる。

ヨーロッパの偏西風の影響は強く、東ヨーロッパ・ロシアまで到達する。有名なところでいうと、ハンガリーである。北海道と同じ緯度帯で内陸に位置するが、温暖湿潤気候となっている。5月・6月の初夏に雨が降るので、プスタのような草原が形成されることになった。ちなみにプスタの地域は元々広大な森林が広がっていたが、オスマン帝国に領有されている時に木々が伐採され、湿帯草原へと変わっていったとのこと。

インド・ヨーロッパ語の中で、主要なものはゲルマン・ロマンス(ラテン)・スラブの三大言語族である。
ロマンシュ語はラテン語を起源とするロマンス語の一種である。カトリックは主にアルプス以南のロマンス語圏と、プロテスタントは主にゲルマン語圏と地域的には一致しているが、ドイツでは南部がカトリックであり、オーストリア・ポーランドなどもカトリックであるように、言語と宗教が必ずしも対応関係にあるわけではない。