新藤兼人『映画つくりの実際』(岩波ジュニア新書 1985)を読む。
著者は1912年に生まれ、2012年に亡くなった映画監督・脚本家である。1934年に京都の映画会社に就職して以来、海軍に招集された1年ほどを除いて80年近くを映画作りに捧げた人物である。370本もの脚本を手がけ、本書でもシナリオについて思いを込めて綴っている。
要するに創作とは、自分自身に対する対決であり、自分を試してみるだけのことである。人はどうかしらないが、私はそうなのだ。だいいち、他人のことなどわかろうはずがない。人物の姿を借りて、私自身の狭いこころと対話しているだけである。
私はどきどき「シナリオはどのように書いたらいいのでしょうか」と問われる。すぐさま私は答える。「あなた自身を、あなた自身が知っていることを書きなさい」と。
シナリオは、そこからはじめなければならない。そしてそこでおわるようである。