月別アーカイブ: 2019年12月

文化系トークラジオ Life

TBSラジオで隔月で放送されている、「文化系トークラジオLife」という番組があります。主に社会学を専門とする若手の学者や評論家が集まって、社会時評やサブカルチャー分析を対談形式で進めていく内容です。

社会学という学問は、人間や集団を取り巻く社会現象、およびその構造について分析する幅広い学問です。そのため学者も、世界史の教科書にも登場する『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を著したマックス=ウェーバーから、発言で頻繁に「炎上」する古市憲寿まで、顔ぶれも多彩です。

その古市さんを生み出したのが、上記のラジオ番組です。最近では、リアル世界で友達と集まる場所や、ネット空間や公共空間におけるジレンマなどについて論じています。

センター試験の国語の評論文でも、社会学者の文章が扱われるようになってきました。大学での学びを味ってみたい生徒にオススメします。過去の放送も全てネットで聴くことができます。以下のサイトをご覧ください。

文化系トークラジオ Life ニュース版

「ブラジルの恵み 現地に還元」

本日の東京新聞夕刊に、ファスナーで知られるYKKグループがブラジルの自社農園で栽培したコーヒー豆を使い、国内でカフェを運営しているとの記事が掲載されていた。

同社では「他人の利益を図らなければ自らも栄えない」とする創業者の経営哲学に基づき、ブラジル進出で得た利益を現地での地域貢献に生かそうと、農場経営と農場で働く人の生活環境の向上に取り組んでいる。

その中心的役割を果たした同社の八木さんは、土地が痩せていたため、コーヒー栽培の前に大豆を植え、牛を飼育し、有機物を土に混ぜて土壌改良を進めたとのこと。この点について少し解説を加えたい。

そもそも、ブラジルの大半はは安定陸塊に属し、古い玄武岩が風化した粘土質のテラローシャや、赤道付近は鉄やアルミニウムが残留した赤土のラトソルといった痩せた土壌に覆われており、農業には不向きな土地である。

しかし、大豆の根には窒素をアンモニアに変換する根粒菌(バクテリアの一種)が共生し、植物が育つための微生物環境を醸成する機能がある。それに畜産を加えることで、植物に最適な土壌を作るというのは、ヨーロッパの混合農業の手法である。日本では火山噴出物からなる鹿児島県・シラス台地で、同じようにマメ科の作物と畜産を加えた農業が普及している。

八木さんの実戦は農業の基本に沿ったものとなっている。現在では年間60トンもの収穫があり、採算ベースに乗ったフェアトレードの一環として評価したい。

「人口流出2割 将来に影」

本日の東京新聞朝刊に、1989年の東欧革命から30年を迎えたルーマニアの現状が紹介されていた。
記事によると、チャウシェスク独裁政権が倒れた後も、共産主義時代の支配層が権力を握り続け、国内経済はずっと低飛空状態が続いているとのこと。1人あたりのGNIは9,970ドルで、EUで最下位のブルガリア(7,760ドル)に次いで低い。ちなみに同じ出典データで日本は同38,550ドルである。

EU域内では単一通貨ユーロやシェンゲン協定により、人や物、金の移動に制限がないため、域内で経済力の低い国から高い国への「移民」が止まらない。ルーマニアではここ30年で人口の2割が流出している。イギリスのブレグジットもそうした東欧や中東からの移民や難民に対する社会不安が根底にある。

記事の最後に「特に医師不足は深刻だ。持続性のある分野への投資を進めるなど、若者の流出を食い止める政策が必要だ」とあるが、日本の地方の過疎化と大変似通った課題が指摘されている。工業団地の誘致や田舎暮らしの宣伝、日本ではあまり評判が良く「ふるさと納税」など、日本の事例がEUでも役立つことがあるかもしれない。

「成田空港近く物流倉庫火災」

本日の東京新聞朝刊に、成田空港近くの倉庫内にあった自動車部品のゴムパッキンが火元と見られる火災が発生したとの記事が掲載されていた。

国土交通省港湾局がまとめた「港湾統計(年報)」(2017)によると、国内の港湾取扱貨物量1位は名古屋港の19,597万トン、2位は成田国際空港の15,329万トンとなっている。ちなみに、3位は11,350万トンの京浜工業地帯の横浜港、4位は10,937万トンの北海道・苫小牧港、5位は10,150万トンの北九州港となっている。

また、成田国際空港株式会社が発行する貨物輸送のパンフレットによると、輸出入の金額ベース(2017)では成田が日本一で、輸出が111,679億円、輸入が122,444億円の合計234,122億円である。2位の東京港が175,632億円、3位の名古屋港が166,078億円となっている。この逆転現象は成田が高額な半導体電子部品や通信機を扱っているからである。

パンフレットにも宣伝されているが、北関東を結ぶ圏央道が成田空港まで開通し、空港内外に多数の国際物流施設が展開・集積され、周辺に工業団地まで建設されている。東京都心から離れているので旅客のアクセスが悪く、国際空港としての役割も羽田に押され気味だが、その反面、広い敷地と北関東との地の利を生かした貨物輸送では十分に成功している。

旅客は羽田、貨物は成田といった安易な棲み分けは難しいであろうが、成田空港の重要性はますます高まっていくであろう。

「未発生都県に豚コレラワクチン」

本日の東京新聞朝刊に、茨城、栃木、千葉の地域で豚コレラワクチン接種を進めるとの記事が掲載されていた。埼玉東部地区の高校生にとって、豚は田舎で飼育されているもので、自分たちの生活圏の話とは思わないであろう。

しかし、国内の豚の飼育頭数は、農林水産省「畜産統計」(2018年)によれば、1位から3位こそ鹿児島、宮崎、北海道に譲るものの、4位に千葉県、5位に群馬県、6位に茨城県、8位に栃木県が食い込む。また、飼養戸数及び飼養頭数は減少傾向で推移しているものの、規模拡大等により1戸当たり飼養頭羽数は増加傾向で推移している。北関東に隣接する埼玉県は豚の飼育上位県に囲まれていると言っても良い。

但し、専門家によると、豚コレラに罹患した豚肉を食べても人間には影響しないとのこと。今後日米貿易協定により、米国産の安い輸入豚肉が流通するようになるので、今般の畜産農家の被害が最小限に抑えられることを祈りたい。

話はずれてしまうが、今年ヒットした映画『翔んで埼玉」に描かれているように、埼玉県民は東京との繋がりばかり意識するが、千葉、茨城、栃木、群馬の4県と県境を接する関東の要衝である。東京に近い都会的雰囲気と、農業や食品工業、組み立て型工業、物流拠点など北関東の郊外の雰囲気を併せ持つ埼玉は、日本で一番暮らしやすいと思うのだが、皆さんの評価は如何に。