一 世界のEnergy・鉱物資源
近代工業の発達のためには,大量のEnergy資源や鉱物資源を必要とする。世界では09年段階石油換算で120億tもの一次Energyを消費しており,日本だけでも石油換算で5億tものEnergyを消費している。近年,再生可能Energyの開発が進み,10%を超えるまでになっている。石炭は年間53.5億t産出され,Energy消費全体の27.2%を占めている。産出量は中国が5割を超え,America,Indiaと続く。輸出はAustraliaが3割弱,Indonesia,Russiaと続く。輸入は日本,韓国,Indiaと続く。石油はEnergy消費の3割を占め,1960年代の「Energy革命」以降,石油の利権を巡る領有権争いが絶えない。石油の多くは褶曲構造地層の背斜部に存在し,埋蔵量の半数が中東に集中している。年間の輸出量は20.1億tであり,Saudi Arabia,Russia ,Iranと続く。天然ガスは油田上部に滞留する石油系ガスと,有機物の腐敗によるメタン系ガスに分類され,環境負荷が小さく埋蔵量も多いため石油の代替として注目され,世界のEnergy消費の2割を占めている。輸出はRussiaが21.6%,Qatar,Norwayと続く。輸入は日本が10.4%で,米国,Germanyと続く。また,近年は地下の頁岩に閉じ込められたShale Gasを取り出す技術が確立され,米国を中心に開発ブームが起きている。
電力は水力・石炭・石油などから作られる2次Energyである。水力,火力,原子力,その他の地熱や風力発電で構成され,Energy資源の有無やEnergy政策の違いを反映して,国によってその構成比は異なる。日本は1960年代まで水力が5割を占めていたが,徐々にその比率を落とし,09年段階で水力8%,火力71%,原子力が20%となっている。しかし,福島の原発事故以降,原子力発電の稼動は止まり,14年現在,太陽光発電を中心とした再生可能Energyが伸びている。
鉱物資源は金属資源と非金属資源に分けられ,金属資源には,鉄資源の鉄鉱石と,非鉄金属の銅鉱,Aluminiumの原料となるBauxiteや鉛鉱,亜鉛鉱などがある。「産業のコメ」と呼ばれていた鉄の材料となる鉄鋼石は安定陸塊地域に多く,Brazil,Australia,中国の3カ国で産出量の約6割を占めている。日本や欧州の多くの国は,鉄鋼石のほぼ全量を輸入に依存している。銅鉱石は新期造山帯に多く埋蔵し,Chilei一国で世界の約3分の1を産出している。Bauxiteは,熱帯やその周辺に多く産出し,Australia一国で世界の3分の1を産出している。また,先端技術産業の発展とともに,希少金属の需要も拡大しているが,資源の偏在性が大きく,政治的に不安定な地域に多いため,国際的な供給の整備が求められている。
二 世界の環境問題
Congo川流域,東南Asia,Amazon川流域の3つの熱帯雨林は,地球上の全面積の7%にすぎないが,生存する植物体の量は地球上の陸上植物の41%,生産量では30%を占めている。しかし,先進国資本による大規模農場や牧場のために,AfricaとSouth Americaでの減少が著しい。Brazilでは2000年から10年間で,264万haも消失している。熱帯雨林は生物多様性だけでなく,気候環境や地球温暖化などに多大な影響を及ぼすために,国際的な観点からの認識と協力が求められる。
乾燥地域の砂漠周辺では,植生が乏しくなり裸地化して土壌浸食を起こす砂漠化が広がっている。森林や草原の過伐採や過放牧が進んだことが大きな原因である。砂漠化が進行してしまうと,周辺の気象環境も変わるため,元の環境に戻すことは難しくなる。特にSahara desの南の縁にあたるSahel地域やTakla Makan砂漠,Great India砂漠周辺ではDust Stormも発生し,住民生活を脅かしている。
酸性雨とは大気中の汚染物質が雲や降雨の中に取り込まれ,ph5.6以下となったものである。森林や街路樹を枯らしたり,土壌や湖沼の酸性化を招いたり,野外の彫像を溶かしたりすることもある。1979年に条約が締結され,広域的な対策が取り組まれている。
この百年間で世界の平均気温は0.68度上昇しており,温暖化が顕著に進行している。化石燃料を大量の消費するようになった結果,大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が増加していることが原因として考えられる。1997年には温室効果ガス排出量の削減目標を定めた京都議定書が採択され,今後さらに排出増が見込まれる中国やIndiaなどの新興国を含めた話し合いが続けられている。
成層圏には日射中の紫外線を吸収するOzone層が分布している。冷蔵庫の冷媒やスプレーなどで広く使われていたフロン類がOzone層の破壊原因である。1987年にOzone層破壊に関するMontreal議定書が採択され,フロンの製造と輸出が禁止されたが,フロンの影響は21世紀半ばまで残るとみられている。
参考資料
『新編地理資料』(東京法令出版)
『新編詳解地理B』(二宮書店)
西沢利栄『アマゾンで地球環境を考える』(岩波ジュニア新書 2005)