日別アーカイブ: 2014年6月12日

人文地理学 第2課題

1 八王子における「学園都市」化の過程
 東京の郊外に位置する八王子は,関東山地と武蔵野台地の境に位置し,水はけがよいために水稲よりもむしろ桑の栽培に適していた。そのため八王子では桑栽培と養蚕、機織りが古くから発達した。また,長野や山梨,群馬で生産された生糸が,八王子に集められ絹製品として出荷されてきた。1906年発行の地図を見ると,甲州街道の宿場町として発展してきた八王子駅の周囲は桑畑で埋め尽くされている。
 しかし,戦後になり繊維産業自体の不振の影響を受け,1960年代末を最盛期に八王子の繊維産業は衰退の一途を辿っている。桑畑の跡地には,東京都心から40kmという場所柄,湾岸地帯から機械や金属工業の工場が多く移転し,大規模な工業団地が建設された。また,地方から東京への人口移動の増加によって,国道16号線を中心とした郊外に住み,都心に通勤通学するというライフスタイルが普及した時期とも重なる。東京都心周辺に位置することから,かつての桑畑が住宅地へ転用され、農村社会から一足飛びに都市化が進んだ地域である。
 また,1963年の工学院大学を皮切りに多くの大学が移転してきて,学園都市としての性格も強まってきた。2013年現在,八王子は21の大学と10.3万人の学生を抱えている。農村,中小工場団地,郊外ニュータウン,大学と大変異なった側面を合わせ持つ都市である。しかし,大学と企業の人材交流や,絹織物産業と先端科学を結びつけるような産業振興,地域活性化も官民協同で地道に取り組まれている。都市と農村といった不釣り合いな関係であるが,時間的推移や空間的考察から,お互いが理解しあい,ともに繁栄する道を模索することは地理学の重要な研究課題でもある。

2 百貨店,スーパーマーケット,コンビニエンスストアの「商圏」と「立地」の特徴
 小売業は住民の消費生活と密接に関係している。店舗の立地は,小売店が扱う商品の種類に左右される。単価の安い食料品や日用品は最寄り品,高級衣料品や家具,電気製品は買い回り品と呼ばれる。安価で購入頻度の高い最寄り品の場合,客は移動の際に支出できる費用や時間を低く抑えようとするため,商圏は必然的に狭くなる。一方,高価で購入頻度の低い買回り品の場合,買い物客がある程度の交通費と時間を負担する覚悟があるために,広い商圏を対象とすることができる。
〈百貨店〉
 買い回り品を中心とした品揃えと接客対面方式を特徴とする大型小売店であり,大都市や地方の主要都市などの限られた中心地に立地する。1980年代は人口増加により急成長した郊外への進出も目立っている。総じて百貨店の立地する中心地は,一定の距離を保ってまばらに分布する。それぞれの中心地が広く,排他的な商圏を補完している。
〈スーパーマーケット〉
 取扱商品の大部分が最寄り品であり,販売手法にセルフサービスの導入が特徴である。特に食品スーパーは,周辺住民が毎日のように利用するために,補完する商圏も狭く高密度に分布する。チェーン方式の経営形態の店舗も多く,特定地域に密集する傾向が強い。
 また,1990年代以降の出店規制緩和や車社会化の進行などを背景に,大都市郊外の幹線道路沿いに大型複合施設としての出店するケースも多い。ロードサイド型と称され,スーパーだけでなく,ホームセンターやドラッグストア,ファミリーレストランなどが併設され,広大な駐車スペースが完備している。郊外地域の住民の自家用車依存と,消費者の低価格傾向に適した小売形態で,広い商圏を補完するために収益性も高い。
〈コンビニエンスストア〉
 1970年代以降,24時間営業のコンビニが,都市や郊外の主要道路沿いに多く立地するようになった。コンビニは,チェーン方式で店舗を増やし,商品の販売だけでなく,公共料金支払いの代行や,旅行などのチケット販売サービスも提供する。そのため,都市圏だけではなく,地方にも広がっている。
 都市部のコンビニの商圏は,客が5~10分で到着できる範囲が望ましいとされ,百貨店やスーパーマーケットよりも密集して立地する。セブンイレブンは,意図的に近隣の同系列店と商圏が重複するように出店している。ドミナント方式と呼ばれるこの経営戦略は,狭い範囲で密集することにより,地域内でのチェーン店の認知度の向上や,ルート配送のコスト削減を狙ったものである。
 地方のコンビニは大都市圏のコンビニよりも商圏が広く,幹線道路沿線での立地や広い駐車場など,自動車での利用を前提としている。その一方,地方都市の中心部からスーパーマーケットが撤退する例もあり,中には生鮮食料品の入手困難な地域も出始めている。

参考文献
八王子市公式サイト(2014年6月10日検索)
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)

人文地理学 第1課題

1 身のまわりの景観
 地理学とは,人々が居住する土地の自然環境や人文環境に対していかに適応しているのかを究明する学問である。すなわち,人間と場所との関わりを考えることである。人間は長い歴史の中で,生きていくために周囲の様々な地域資源を活用し,自分たちの生活環境を築いてきた。身の回り景観は,そのような人間の営為により生み出されてきたものである。したがって景観には,その地域で生活する人びとの価値観が投影されており,これを読み解くことによって,人間と地域との関わりを理解することが可能である。
 地域との関わりといっても,現場第一主義で,実際に現地を訪れないと何も分からないということではない。日常の風景や観光写真一枚からでも,そこで生活する人びとの表情や服装,町並みの様子から,生活文化は伺えるものである。また,現地の歴史や地図,統計からの情報を加えると,表象に覆い隠された地域性を見いだすことができる。
 人間は周囲の自然環境の制約を受けつつも,それを克服・改変しながら,自分たちの生活空間を生み出してきた。人間の手が加わっていない景観(自然)に人間活動が作用されて形成された景観(人文)を地理学では文化景観と呼んでいる。米国の地理学者Sauer,C.Oは,人間生活の総体としての文化が景観を生み出す営力として作用し,時間の経緯とともに景観が形成されるとした。身の回りの景観を注意深く観察することによって,地域と人間との関わりを知ることが可能である。近年では,景観が社会的に構築される過程に注目し,その主体の果たす役割に焦点をあてたり,景観が示す象徴的な意味を探求する研究が盛んに行われている。
 日本でも1960年代以降,海水浴やスキーなどの野外レクリエーション,1980年代にはテーマパークやリゾート開発が盛んになり,観光地域が拡大してきた。しかし,1990年代半ばから,旅行支出が減り,安くて、近くて、短期間の旅行が好まれるようになり,観光産業の利益も減少した。一方,身近な都市や農村を訪れて,地域の豊かな文化や自然環境,景観そのものを楽しむ観光も見直されてきている。今後はこれらの観光を,そこで暮らす人びとを主人公とした地域づくりや地域の活性化に結びつけることが課題である。
 
2 フィールドを歩いて地域を地域を調べる
 「地域の特徴を明らかにしようとする」地理学の課題に取り組むには,直接現場に出かけて調査する,いわゆるフィールドワークが欠かせない。
 それぞれの地域には,その土地の自然や歴史と深く結びついた人びとの暮らしや生業がある。住民の暮らしぶりは地域によって異なっており,それゆえ土地に生きる人びとの様子を知ることによって,地域の特徴を明らかにすることができるようになる。
 ある地域で人びとはどのような暮らしをしているのか。その様子はその土地固有の景観にあらわれることが多い。ビルや商店などが密集した都市の景観,農家や農地が目立つ農村の景観など,いずれも地域の特徴をつかむ重要な手がかりになる。ここでいる「景観」とは,地形や植生などの自然環境とともに,地域で暮らし,そこで活動する人びとによって作られた建築物や土地利用を合わせた総体を示す。ただ,漠然と現地を歩いただけでは地域の特徴を捉えることはできない。事前にインターネットで初歩的・基本的な情報を得ておいたり,新聞や書物などで現地の抱える問題(過疎化や環境破壊,言語や宗教など)を整理しておいたりしておきたい。また,日本国内であれば,市町村などの公的団体のサイトを利用することによって,地域の歴史や産業など多面的に,かつ即時的に把握することが可能である。
 また,地域に住む人びとの暮らしぶりは,住民から直接話を聴くことによって,さらに詳しくわかってくる。商店や工場,農家や学校の人びとの生活を知るための資料を得ることができる。さらに地域の人びとに対して聞き取り調査を行うことによって,彼らの具体的な生活の様子がわかり,それが地域の特徴をとらえることへと進んでいく。聞き取り調査も単なるおしゃべりに終わってしまっては,他者理解以上の地域生活の理解には繋がらない。フィールドノートを持参したり,記録や統計などを用いたりして,生きている社会調査にまで踏み込みたい。

参考文献
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)
高橋伸夫他『改訂新版ジオグラフィー入門』(古今書院 2008)

『世界遺産のミステリー』

ロム・インターナショナル編『あなたの知らない世界遺産のミステリー:あの遺跡・建物・都市に秘められた不思議な謎話』(河出書房新社 2004)を読む。
ピラミッドや万里の長城、マチュ・ピチュ、カッパドキア、ポンペイなど、定番の世界遺産ミステリーを取り上げ、成立や滅亡の謎を紹介している。宇宙人や超古代文明といったオカルト的な文脈に流されることなく、観光ガイドの範疇の中で魅力を伝えている。

ここ何ヶ月か週NHKの『シリーズ世界遺産100』という5分の短編ドキュメンタリーを、帝国書院発行の地図帳で国情や環境を確認しながら観るという習慣を続けているので、すんなりと国の位置と周辺の地理が出てくるようになった。一寸した自慢。

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