月別アーカイブ: 2013年3月

『フロム・ヘル』

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 地上波で放映された、ジョニー・デップ主演『フロム・ヘル』(2001 米)を観た。
 19世紀のロンドンが舞台であり、切り裂きジャックを作品の題材とした連続殺人事件に関するサスペンス映画である。30分以上カットがあったので、おそらくは残虐なシーンも大幅に省かれていたのであろう。肝心な繋がりすらもカットされたためか、話の辻褄がよく分からないまま終わってしまった。
 犯人もそれを取り締まる警察もフリーメイソンが絡んでおり、フリーメイソン自体が非道な組織として描かれていた。カトリックとの対立にも触れられていたが、こうした映画が作られるアメリカ社会の背景が気になった。

『マインドハンター』

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地上波で放映された、レニーハーリン監督『マインドハンター(Mindhunters)』(2004 米)を観た。
FBI心理分析官の実践演習として孤島に連れてこられた8人の訓練生が、ある企みにより一人ずつ予告殺人に巻き込まれていくという恐怖を描く。テンポが良く最後まで楽しむことができた。
ただし、最後の格闘の場面で、犯人が水中で放った(?)鉄砲の弾を身をかわしてよけるという『マトリックス』もびっくりの合成シーンが挿入されており、せっかくの高まっていった緊張感も一気に弛緩してしまった。

『後宮小説』

第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作、酒見賢一『後宮小説』(1989 新潮社)を読む。
中国を舞台とした全くのファンタジーなのだが、歴史書を元にして作者と一緒にドラマの世界を漫遊するという形をとっており、歴史冒険小説を読んでいるようなワクワク感があった。一応物語の中では、1600年代前半という記述があるので、明末の李自成の乱を元にしたのかとも思ったが、唐の時代の安史の乱にも近いし、辛亥革命を思わせるようなところもあり、不思議な雰囲気の小説であった。

『早朝座禅』

山折哲雄『早朝座禅:凛とした生活のすすめ』(祥伝社新書 2007)を読む。
禅行については「素人」の著者が、早朝の3分だけの「ファスト」座禅を説く。また、日本文化や文学、歴史を縦横に駆け巡りながら、宗教的な視点から現代社会を論じている。その中で、ストレスの話が興味深かった。著者は周囲の人と比べるから不満や不安がたまってしまうと述べ、そうした「横」のつながりだけでなく、祖先や師匠、自然といった自分の狭い世界を超越する存在と向き合い、自分をさらけ出すことが大切だと述べる。

 他人との比較には際限がない。自分の幸福度を他人と比べているかぎり、決して不満がなくなることはないだろう。隣の家より高級な自動車を買ったとしても、さらにその隣の家は同じような自動車を二台持っているかもしれない。いくら年収が増えても、上には上がいる。嫉妬心や不満は無限に続くわけだ。だからこそ、比較「地獄」へ向かう道なのである。
 ではこの「比較地獄」から脱出するにはどうすればよいか。私はそのために、人間関係の成り立ち方そのものを見直すべきだと考えている。いささか抽象的ないい方になってしまうが、「横」に広がっている人間関係に「縦」の軸を持ち込むことが、自分と他人を比較せずに生きていくのに必要だと思うのだ。