山折哲雄『早朝座禅:凛とした生活のすすめ』(祥伝社新書 2007)を読む。
禅行については「素人」の著者が、早朝の3分だけの「ファスト」座禅を説く。また、日本文化や文学、歴史を縦横に駆け巡りながら、宗教的な視点から現代社会を論じている。その中で、ストレスの話が興味深かった。著者は周囲の人と比べるから不満や不安がたまってしまうと述べ、そうした「横」のつながりだけでなく、祖先や師匠、自然といった自分の狭い世界を超越する存在と向き合い、自分をさらけ出すことが大切だと述べる。
他人との比較には際限がない。自分の幸福度を他人と比べているかぎり、決して不満がなくなることはないだろう。隣の家より高級な自動車を買ったとしても、さらにその隣の家は同じような自動車を二台持っているかもしれない。いくら年収が増えても、上には上がいる。嫉妬心や不満は無限に続くわけだ。だからこそ、比較「地獄」へ向かう道なのである。
ではこの「比較地獄」から脱出するにはどうすればよいか。私はそのために、人間関係の成り立ち方そのものを見直すべきだと考えている。いささか抽象的ないい方になってしまうが、「横」に広がっている人間関係に「縦」の軸を持ち込むことが、自分と他人を比較せずに生きていくのに必要だと思うのだ。