養老孟司・久石譲『耳で考える:脳は名曲を欲する』(角川oneテーマ21 2009)を読む。
解剖者の養老氏と、日本を代表する音楽家の久石氏の二人が、聴くという行為や名曲の定義、感性や意識について議論を交わしている。久石氏の質問に対して養老氏が脳科学の立場から説明を加えるという形が多いのだが、久石氏も論理的に音楽を構築する主義なので、上手く議論が噛み合っている。
話の中で、久石氏が映像と音楽を合わせるために、映像からコンマ数秒音楽を遅らせるという談話があった。映像の方が目に届く時間は早いのに、音楽の方に早く人間の意識が向いてしまうということである。そのような調整があってこその映画音楽なのだと改めて感心した。