本日の東京新聞朝刊一面に、「コムスン」問題で表面化した劣悪待遇や景気回復などの要因から、介護養成校への入学者が昨年に比べ13%も減少したとのニュースが載っていた。
2000年度の介護保険導入や、昨年改定された「介護予防」により、介護報酬が引き下げられ、やめる人が増えて仕事はきつくなるのに、給与は減少するという悪循環に陥っているとのことだ。高齢社会をよくする女性の会の樋口会長は「嫁に押しつけられていた介護を、社会で担うものにした介護保険。しかしいま、介護従事者が『社会の嫁』にされている」と介護従事者の窮状を訴えている。
家族や親類の「介助」から社会全体の「支援」へと福祉の転換が行われている中、一部の福祉従事者の生活を破壊する形で負担がしわ寄せされている現状は看過できない。樋口会長の批判はその点で的を得ていると思った。
月別アーカイブ: 2007年12月
「村上春樹という不思議な存在」
本日の東京新聞夕刊の文化欄に先日行なわれた「村上春樹という不思議な存在」と題した討論会の様子が掲載されていた。横浜市立大学の鈴村和成氏、東大の藤井省三氏、評論家の川村湊、専修大の柘植光彦氏の4人の研究者がそれぞれ春樹研究の現在と展望について語り合っている。その中で柘植氏は「春樹は僧侶だった父親の影響を大きく受けている。彼が描く『別の世界』や『死後の世界』に、日本的無常観もあるのでは」と述べ、藤井氏は「伝記研究が決定的に欠けている。誰かがもう始めても良い」と指摘する。
まだ生きている50代の作家に対して、「伝記研究」をすべきだと称されるということは、彼が並外れてすっげー作家だということである。大学時代に卒論担当の教員から「生きている作家は評価が変わるし、本人が否定したらお終いだから、文学研究の対象にはならない」と注意を受けたが、こと村上春樹には通じない通説であるようだ。
「憲法を歩く」
本日の東京新聞の「憲法を歩く」と題した連載記事で、いわゆる「ネットカフェ難民」の生活が載っていた。36歳の男性の悲哀な生活の実態
また、夕刊の文化欄では作家高村薫さんの
『ミッドナイト・イーグル』
高嶋哲夫原作・大沢たかお主演『ミッドナイト・イーグル』(松竹 2007)をララガーデンへ観に行った。
一言で感想を述べるならば、壮大なスケールと結末の予想できないテンポのよい場面展開の上で繰り広げられる、つまらない深夜ドラマといった感じだ。
自衛隊と北朝鮮?の工作部隊の銃撃シーンでは、自衛隊一個中隊が壊滅してしまう中、新聞記者は不思議と銃弾がかすりもしない。また、秘密を握る工作員が亡くなるシーンでは、死際に友人の腕に抱かれながら秘密をうわ言のように呟いてガクッと倒れてしまうなど、いかにも20年前の安っぽい刑事ドラマが描かれる。他にも自衛隊の装備の?や内閣危機管理室の?などのシーンで、何度も心の中でツッコミを入れていた。
見終わった後、映画という表現媒体そのものの限界すら感じた。おそらく原作は寒さと吹雪で視界が真っ暗な中で繰り広げられる銃撃戦の恐怖を読者の限りない想像力に委ねるのであろう。その舞台では暗闇の中で、目に見えない相棒と敵に囲まれた不安やしかし、映画では夜の冬山という設定にも関わらず役者にはライトが照らされ、
途中で文章が頭の中がこんがらがってまとまらなくなった。今週はめちゃくちゃ忙しかった。いや、今週「も」忙しかった。明日の日曜日はゆっくりと休みたい。
P.S.
先程、この雑記帳の検索窓で原作者高嶋哲夫氏を検索したところ、6年前に高嶋氏の『塾を学校に』(宝島新書 2000)を読んでいた。教育論から、ノンフィクション、そして今回のようなハードミステリーに至るまで幅広いジャンルをカバーしている多芸な作家である。
『為替相場・巨額の頭脳戦』
NHKスペシャル「同時3点ドキュメント」取材班『為替相場・巨額の頭脳戦』(日本放送出版会 2006)を読む。
1日で約220兆円ものお金が取引される為替市場の現実を、ニューヨークのヘッジファンド「FXコンセプツ」と、中国政府肝いりの香港のヘッジファンド「シティック・キャピタル」、そして東京の「みずほコーポレート銀行」の国際為替部の3者をリアルタイムで追いかけ、為替変動に伴う緻密な変動予想や仕掛けの思惑を分単位で描き出す。日本円はドルの影響をもろに被るだけでなく、中国元の利上げにも根底から影響される現実を知った。結局グローバルなマネーゲームの世界も、政府の意向で簡単にドルを操作できる米国にあるヘッジファンドや、中国政府の裏情報を知る中国の政府系ヘッジファンドが儲かる仕組みになっているのである。特に極端に元安政策を取る中国は輸出によって外貨準備金がどんどん増えており、そうしたお金が原油や資源の先物取引に回っている現実は、実態が掴みにくい分だけ不気味である。
NHKスペシャル シリーズ 同時3点ドキュメント