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『日本の宇宙開発』

中野不二男『日本の宇宙開発』(文春新書 1999)を読む。
宇宙開発は原子力同様,民生技術も容易に軍事用に転用できるため,宇宙開発事業団を設置する際,衆参両院で「宇宙開発は平和目的に限定する」という原則を設けている。

「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」 1969年5月9日 衆議院
わが国における地球上の大気圏の主要部分を超える宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げ用ロケットの開発及び利用は,平和の目的に限り,学術の進歩,国民生活の向上及び人類社会の福祉を図り,あわせて産業技術の発展に寄与するとともに,進んで国際協力に資するため,これを行うものとする。」

しかし,平和目的に限定しすぎたがために,再突入技術や軌道修正の技術などが,ICBM(大陸間弾道ミサイル)に抵触するとして,開発を許されることはなかった。「協調路線」という日米安保を基軸としたアメリカの傘下の中で,糸川英夫を中心とした東大・生産技術研究所の独自路線も光を浴びることはなかった。一方アメリカであるが,かたや日本やヨーロッパ各国には「協調」という名のものとで技術公開を迫り,片や先鞭をつけたインテルサット(アメリカによる通信衛星システムを利用した全地球規模ネットワーク)の障害となるような行動をする国には一切の協力を拒むといった宇宙開発の姿勢はそのままアメリカの20世紀の国家戦略を象徴している。