木村政雄『笑いの経済学:吉本興業・感動産業への道』(集英社新書 2000)を読む。
吉本興業はさんまや紳介など数多くのタレントを抱えた芸能プロダクションであるが,ヤクルトの高津や体操の田中光などスポーツ選手も含め所属タレントは650名を数える。また吉本興業は,東京一極集中が進んだこの日本で,大阪弁と大阪経済の活性化を企業理念の第一とする企業である。
言葉は思考体系,行動体系のインフラです。そのためには大阪弁は捨ててはならないものです。大阪マインドはあの言葉に深く宿っています。先ほど(大阪弁を)芸能界の共通語にと宣言しましたが,実は商売,経済活動の共通語にもと密かに思っています。
東証一部上場企業でありながら,これだけ大阪を前面に出す企業も珍しい。タレントの「笑い」を起爆剤として,大阪経済の牽引役を担わんとする吉本興業という企業に着目していくのも面白い。
また,吉本は単なるタレント事務所の枠を越えて,スポーツ,政治,教育,宗教などを「笑い」によって活性化させていく「感動産業」をビジョンに入れている。確かにスポーツや政治の世界では,テレビ慣れしたスポーツマンや政治家も増え,ニュース番組だけでなく,バラエティ番組にも数多く出演している。また多くの芸能人が様々な形で関わることで,視聴者に親近感を与えている。しかし教育や宗教などはまだテレビの世界には開かれておらず,保守性を保っている。今後タレントが大学・予備校の授業や,宗教活動を受け持つ時代もやってくるのだろうか。
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