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『飛行機は世界を変えた』

大谷内一夫『飛行機は世界を変えた』(岩波ジュニア新書 1990)を読む。
タイトルにある通り、20世紀以降の飛行機の発展は戦争や経済を大きく変えることとなった。1903年にライト兄弟の初飛行以来、第一次世界大戦開始の1914年8月までに作られた飛行機は、合計1万機程度だった。これに対し、大戦中に作られた飛行機の合計は役17万7000機である。1914年当時の軍用機は時速80から120キロ程度、運用高度は3000mくらいだった。大戦末期の戦闘機は時速200キロ、運用高度は6000mになっていた。戦争は開発技術の試験を兼ねるので、一気に性能が向上していくこととなった。

また、1969年にブラジルの国営航空機メーカーとして誕生したエンブラエル社は、現在ボーイングに次ぐシェアを占めている。ネットニュースによると、バイオジェット燃料や電動小型航空機の開発も手がけているとのこと。ブラジルの工業発展の中で捉えておきたい。

『銀河宇宙オデッセイ 別巻』

NHK取材班『銀河宇宙オデッセイ 別巻:ビジュアル 宇宙がわかるデータブック』(日本放送協会 1991)をパラパラと読む。量子力学やらダークマターなど、数式も入ってきてよく分からなかった。唯一「星の死」の項が面白かった。質量が太陽の10倍以上もある恒星が老年期を迎えると、重力崩壊が起こる。

恒星内部のあらゆる物質に火がつき始め、中心温度が30億度にもなると、鉄の原子核がつくられ始める。鉄は元素の中で最も安定しているために核融合をしない。その結果、星の中心は収縮に次ぐ収縮で50億度もの高温になる。これほどの温度なると、鉄の原子核が破壊され、ばらばらの中性子や陽子になり、重力崩壊を起こす。

重力崩壊が始まると、星は急激に収縮し、中心密度が1立法センチあたり100万トンにもなると、ニュートリノですら、星の外に出られなくなる。密度が2億7000万トンを超えると全ての原子核は押し潰され、星の中心は中性子でできたガスになる。そして中心密度が1立法センチあたり4億トンになると、太陽の100億倍の明るさまで輝き出し、星全体が宇宙空間に飛び散っていく。これが超新星爆発である。

『銀河宇宙オデッセイ 第4集』

NHK取材班『銀河宇宙オデッセイ 第4集:ET・宇宙人との交流 宇宙環境と生命』(日本放送協会 1990)をパラパラと読む。
NHKで放映された報道番組『銀河宇宙オデッセイ』の書籍化である。地球外知的生命体探査SETI(英語: Search for Extra Terrestrial Intelligence)は、インターネットと共に始まったと思っていたが、実は1960年代初頭から始まっていたということを知った。

『第五福竜丸』

広田重道『第五福竜丸:その真相と現在』(白石書店 1977)をパラパラと読む。
著者は戦前から反戦運動で数回にわたって投獄された経験を持ち、都立第五福竜丸展示記念館の初代館長を務めている。本書では1954年3月1日にビキニ環礁水爆実験で被曝した第五福竜丸事件の顛末と、その後の保存運動が丁寧に解説されている。第五福竜丸の問題が日米両政府の共同歩調により隠蔽・矮小化された事実や、第五福竜丸本体が後に日本政府によって巧妙に隠され、挙句の果てに屑鉄廃棄される寸前に当時の美濃部亮吉都知事によって保存されることになった経緯、原水禁と原水協の哀しい路線対立など、現場で活躍されたからこその思いが込められている。

『大地と人を撮る』

高野潤『大地と人を撮る:アンデスを歩きつづけて』(岩波ジュニア新書 2008)を読む。写真学校を卒業後、30年以上にわたってアンデス山脈の風景と、そこに暮らす人々を追いつづけた著者が、自身が経験してきたままにアンデスでの生活の厳しさを語る。

ジャガイモとトウモロコシは南米を原産とし、世界に広がった代表的な作物である。降水量も少なく、痩せた土地でも育つこの2つの作物は、世界中の飢えを救っている。また、日本で稲が食糧、酒、燃料、肥料、屋根、畳、綱などに利用されてきたように、アンデスでは多品種のジャガイモから食料だけでなく、保存食や酒、家畜の餌としても使われ、最後は種芋としても利用される。南米を代表する動物のリャマやアルパカも荷物の運搬や耕作の手伝いだけでなく、毛を利用して服を作ったり、最後は人間の胃に収まっていく。日本の江戸時代の農村のように、無理や無駄がなく、人間と社会と自然の間でリサイクルの輪が完結している。