『第五福竜丸』

広田重道『第五福竜丸:その真相と現在』(白石書店 1977)をパラパラと読む。
著者は戦前から反戦運動で数回にわたって投獄された経験を持ち、都立第五福竜丸展示記念館の初代館長を務めている。本書では1954年3月1日にビキニ環礁水爆実験で被曝した第五福竜丸事件の顛末と、その後の保存運動が丁寧に解説されている。第五福竜丸の問題が日米両政府の共同歩調により隠蔽・矮小化された事実や、第五福竜丸本体が後に日本政府によって巧妙に隠され、挙句の果てに屑鉄廃棄される寸前に当時の美濃部亮吉都知事によって保存されることになった経緯、原水禁と原水協の哀しい路線対立など、現場で活躍されたからこその思いが込められている。