高野潤『大地と人を撮る:アンデスを歩きつづけて』(岩波ジュニア新書 2008)を読む。写真学校を卒業後、30年以上にわたってアンデス山脈の風景と、そこに暮らす人々を追いつづけた著者が、自身が経験してきたままにアンデスでの生活の厳しさを語る。
ジャガイモとトウモロコシは南米を原産とし、世界に広がった代表的な作物である。降水量も少なく、痩せた土地でも育つこの2つの作物は、世界中の飢えを救っている。また、日本で稲が食糧、酒、燃料、肥料、屋根、畳、綱などに利用されてきたように、アンデスでは多品種のジャガイモから食料だけでなく、保存食や酒、家畜の餌としても使われ、最後は種芋としても利用される。南米を代表する動物のリャマやアルパカも荷物の運搬や耕作の手伝いだけでなく、毛を利用して服を作ったり、最後は人間の胃に収まっていく。日本の江戸時代の農村のように、無理や無駄がなく、人間と社会と自然の間でリサイクルの輪が完結している。