地理」カテゴリーアーカイブ

「スペイン沖の難民 海難死者2000人超」

本日の東京新聞朝刊に、アフリカから海を越えてヨーロッパを目指す難民の事故の様子が報道されていた。コロナ禍で政治・経済情勢が悪化したアフリカ諸国を脱出する難民が急増しており、特モロッコ沖のカナリア諸島へ辿り着いた難民は、2019年の10倍の数となっている。アフリカの貧困や安全な暮らしが保障されないと、このような危険な亡命は無くならないであろう。

ちなみに、カナリア諸島は、常時北西からの強い貿易風(北東貿易風)に晒されている。そこで、1492年にコロンブスが寄港して、一路インドを目指したという話は、1学期の世界史の授業で触れている。

また、貿易風とは、北(南)緯20度から30度付近の亜熱帯高圧帯から赤道付近の赤道低圧帯に向かって流れる風(高圧帯から低圧帯)に地球の自転の影響(コリオリの力)が加わった恒常風であり、海面付近に吹くので昔から帆船貿易に利用されたことに由来する。こちらも1学期の地理の授業の「大気大循環」の項で触れている。

「英、EU離脱完了 混乱警戒」

本日の東京新聞朝刊より。
今年の1月1日より英国がEUから離脱をした。授業で触れたところであるが、英国の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(UK)」といい、イングランドとスコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国の連合国である。

特にスコットランドは、イングランド主導のUKに違和感を感じる人が多く、2014年に独立住民投票が行われている。その時は44.7%対55.3%で否決されたのだが、EU離脱に伴う混乱が長期化下場合、次の住民投票の結果は大きく変わるであろう。また、北アイルランドもEUに留まっているアイルランドへと接近を探ることになるであろう。

日本は英国と昨秋、経済連携協定(EPA)を締結させており、今月1月1日からの施行となっている。経済連携協定とは、関税だけでなく知的財産の保護や投資ルールの整備なども含めた幅広い分野での協定である。日本と英国の間の協定もスコットランドの独立によって、全てご破産となる可能性がある。

地球温暖化によって、北極海の氷が溶け(授業の中で、暖流である北大西洋海流の影響で触れました)、新たに北極海の資源や航路を巡って米中露が対立を深めている。トランプ前大統領のグリーンランド購入といった話も、北極海開発の中で出てきた話である。

日本とヨーロッパを結ぶ航路は、エジプトのスエズ運河とシンガポールのマラッカ海峡を経由したルートである。イエメン周辺や南シナ海など地政学的リスクは大きい航路であると言わざるを得ない。一方、現在開発が進んでいる北極海ルートはスエズ航路に比べ3割ほど日程も燃料も少なくなるとの計算もある。

日本と英国の貿易も、近い将来北極海航路を経由したものになるかもしれない。そうなるとインド洋周辺国との関係も大きく変わっていくことであろう。
3学期の授業といっても、実質4週間程度だが、日々動いていく地理の面白さを伝えていくことができればと思う。

「海南島を自由貿易港に」

本日の東京新聞朝刊に、「中国のハワイ」とも呼ばれる海南島の紹介記事が掲載されていた。中国政府としては、香港に代わる観光・貿易の都市として位置付けたいとする思惑があるようだ。今年はコロナ禍で落ち込んでいるが、数年後には買い物やグルメ、エステなどで海南島観光がメジャーな選択肢の一つとなっていくのであろうか。

一方で、南シナ海に突き出た海南島は中国の「一帯一路経済圏構想」の一角を担っている。海南島の自由貿易と南シナ海の安全保障体制がセットになっている点は留意しておきたい。

「コロナ禍で決裂回避圧力」

本日の東京新聞朝刊より。
期末考査で扱いましたEUのイギリス離脱問題です。今年の2月に離脱が正式に決定し、9か月にわたって、EUと英国の間で貿易協定交渉が行われてきました。貿易の詳細の取り決めまでは分かりませんが、概ねEUと英国の間で、これまでと同じように関税のない、自由貿易協定が締結されたとのことです。
いったいなぜEUはこれほどまでに英国に対して譲歩を繰り返すのでしょうか。私はよく分かりません。英国を敵に回すと怖いのでしょうか。「ユニオンジャックの矢」とも呼ばれる英国の世界戦略に忖度しているのでしょうか。どなたか、調べてくれませんか。

「再生エネ 30年に45%」

本日でやっと長い2学期が終了しました。
終業式は考える時間だとお伝えしました。皆さんにとっての1年間の反省と来年の展望は如何だったでしょうか。また、「笑顔と拍手は届けるもの」という、私が昨日作った名言(迷言?)を紹介しました。登壇している受賞者に拍手の音は届いたでしょうか。また、体育館の後ろに座っている生徒に受賞者の笑顔は届いたでしょうか。ここしばらく忙しくてバッタバタでした。また、新聞記事から世界を読み取っていきたいと思います。

本日の東京新聞の記事から。
自民党は先日、2050年までに原油や石炭、天然ガスなどの温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を打ち出しました。そして日本のエネルギー政策の半分以上を、太陽光や水力、地熱、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーで賄うとしています。記事によると、その割合を45%に下げたとのことですが、問題は残りの55%です。現政権は原発再稼働に前のめりであり、原発をベースロード電源に据えるとしています。授業の最後で津波の被害の恐ろしさについてのビデオを見せました。原発は水量が豊富な海沿いなどにしか建設できず、日本は全国津々浦々、津波の被害を免れない国です。本当にこのまま原発に依拠して良いのでしょうか。

「化石燃料を止めて、再生可能エネルギーを大事にしましょう」といった、中学校の授業のような話はしません。米国、中国、ロシアといった大国の戦略外交の中で、日本がとるべきエネルギー政策について、3学期の授業で深掘りしていきたいと思います。

こんなところが終業式で私が考えた目標です。