地理」カテゴリーアーカイブ

「ダム 全国容量2倍に」

本日の東京新聞朝刊に、全国のダムで大雨予想の3日前から放流し続ければ、雨を堰き止めるダムの容量が全体で2倍になるとの試算を政府がまとめたとの記事が掲載されていた。

記事では触れていなかったが、2年前の西日本豪雨で、愛媛県西予市の野村ダムが満水に近づき、肱川への緊急放流の直後に下流の同市野村地区の650戸が浸水し、5人が死亡するという「事件」が発生した。ダムを管轄する国土交通省は、「予測を上回る雨だった。規則に基づいて適切に運用した」と繰り返すだけで、急な放流による「人災」を否定した。

確かにダム行政は、治水ダムを管理する国土交通省だけでなく、利水ダムは農林水産省や経済産業省が押さえているし、それに気象庁や民間業者、さらに国と県と市町村の管轄が入り混じっていて、外からみても非常にややこしい。しかし、この程度の試算はデータさえあれば、小学生でも出来るものである。皆さんもそう思いませんか。記事を読んでいて、私は一人で憤慨してました。結局は縦割り行政の弊害で、そこで暮らす住民の安否が二の次にされてしまう事態が繰り返されている。

こうした災害によって露呈する政治の貧困についても、原発問題や震災被害と合わせて、3学期の授業の中で触れていきたいと思う。

「地球から消えた森林 日本列島の5倍」

本日の東京新聞朝刊に、1990年からの30年間で、世界全体で178万平方キロメートルのの森林が失われたとの記事が掲載されていた。特に南米とアフリカでの減少幅が圧倒的に大きく、その原因として農地への転用や木材伐採、山火事などが挙げられている。

特に南米アマゾン川流域の熱帯雨林は、「地球の肺」とも呼ばれ、地球温暖化の主因ともなっている二酸化炭素を吸収する役割を担っている。日本の真裏に近い南米であるが、日本の環境にも大きな影響を与えている。また、アフリカや南米の赤道付近は土壌が痩せており、日本とは異なり一度森林を伐採してしまうと、土壌がむき出しとなってしまい、耕作に適さない土地になってしまう。

いずれにせよ、ここ10年間で年間47,000平方キロメートル、1日に128平方キロメートル、1時間に5平方キロメートルの森林が失われているという現実は直視しなければならない。

「伊、来月にEU国境開放」

本日の東京新聞朝刊に、イタリア政府が観光業と農業に配慮して、国境開放し入国を認める方向で動き出したとの記事が掲載されていた。

まず観光であるが、イタリアというとローマの遺跡や中世の教会、美術館、ヴェネツィアの街並みといった世界遺産の宝庫といったイメージが強い。日本人は特に団体旅行が好きなので、ピサの斜塔やスペイン広場など観光地を駆け足で回っていくのであろう。

しかし、イタリアの夏はイギリスやドイツなどのヨーロッパ北部の地域の人々が、温暖な気候に恵まれた地中海沿岸地域に長期滞在するバカンスの中心地である。

ちなみに世界で最も観光客が多い国別ランキングは以下の通りである。(World Tourism Organization調べ 2019)

    1. フランス(8,900万人)
    2. スペイン(8,300万人)
    3. アメリカ(8,000万人)
    4. 中国(6,300万人)
    5. イタリア(6,200万人)
    6. トルコ(4,600万人)
    7. メキシコ(4,100万人)
    8. ドイツ(3,900万人)
    9. タイ(3,800万人)
    10. イギリス(3,600万人)
    11. 日本(3,100万人)

記事によると、イタリアの観光産業は国内総生産(GDP)の約13%を占めるという。日本は同約5%なので、イタリアの深刻度が窺い知れる。スペインやトルコも同じであるが、国内総生産に占める観光産業の割合が大きい国は、今回のコロナ禍は大きな爪痕を残すであろう。

また、イタリアの農業は同じEU域内のポーランドやルーマニアの季節労働者が担っている。日本の農業も短期の外国人労働者(技能研修生)が増えている。特に人手が不足している20代、30代に絞ると、約7%と14人に1人が外国人となっている。特にベトナム出身の労働者が増えているという点は、授業の中でも確認していきたい。

〈地中海式農業〉
地中海沿岸地域に代表される、夏の果樹栽培、冬の小麦栽培とヤギ・羊などの家畜の飼育を組み合わせた農業を地中海式農業という。夏には、乾燥と高温に耐えられるオリーブやレモンなどの柑橘類、ぶどう、コルクがしなどの樹木作物の栽培が集約的に行われる。また、冬には雨を利用して、平地を中心に小麦栽培が行われる。現在ではアメリカ合衆国南西部やチリでも地中海性気候を生かしてこのような農業が行われる。

「ウイグル人権法案可決」

本日の東京新聞朝刊に、米上院本会議で、中国新疆ウイグル自治区で続くイスラム教徒への人権侵害に制裁を科す法案を全会一致で可決したとの記事が掲載されていた。

そもそも新疆ウイグル自治区と言われて、ピンとくる人は少ないでしょう。地図帳を開いてみると、中央アジアに位置し、中国全土の6分の1を占める広大な土地であると分かります。領内には広大なタクラマカン砂漠がありますが、日本の約4.5倍の広さがあります。元々中国の大半を占める漢民族とは異なるウイグル人の国で、言語も宗教も異なります。中国の首都北京から見れば、ウイグル自治区は辺境の地にあるのに、中国政府がなぜウイグル人に対し不当な拘束や拷問、信教の自由の否定などを行うのか、よく分からないでしょう。

皆さんは中学校か高校1年次に国語の授業で杜甫の「春望」を習ったことでしょう。「国破れて山河在り 城春にして草木深し」から始まる五言律詩です。唐の都長安がめちゃくちゃに破壊され、楊貴妃の愛欲に溺れた玄宗皇帝が都を逃げ出す安史の乱を描いた作品です。当時唐の役人(科挙に受かった超エリート)になったばかりの杜甫は、国そのものがなくなっていく不安で一夜にして白髪の老人になってしまいます。

中国の歴史は周囲の国との軋轢の歴史と言ってもよく、中央アジア出身の安禄山、史思明によってシルクロード貿易で栄えた唐が滅ぼされたり、モンゴル人の元や女真族の清などに支配されたりと、日本とは全く異なる政治観が形成されてきた。

そのため、現在の中国政府はウイグル自治区だけでなく、チベット自治区や香港、台湾を含め、「一つの中国」というナショナリズムを貫徹しようとします。新疆ウイグル自治区での人権侵害と、香港の独立を強圧的に押さえつけようとする動き、台湾に対する執拗な嫌がらせも同じ地平で見ていくべき問題です。

中国の問題になぜ米国が絡んでくるのかということについては、授業の中で触れたいと思います。

「コウナゴ 水揚げゼロの衝撃」

本日の東京新聞朝刊に、宮城県沿岸で水揚げされるコウナゴが全く獲れないとの記事が掲載されていた。

中学校の地理で学習したと思いますが、岩手県や宮城県の三陸海岸沖は寒流と暖流が出会う潮目となっています。そのためサケ、マス、タラ、にしん、サンマなどの寒海魚と、イワシ、さば、カツオなどの暖海魚も水揚げされ、世界三大漁場の一つに数えられています。しかし、記事にもあるが、地球温暖化の影響で、寒流の勢いが弱くなり、潮目の場所が三陸沖から大きく北上しています。

地球温暖化は、海水温に大きな影響を及ぼします。下記は2020年2月に気象庁が発表した海面水温の長期変化傾向のグラフです。130年前からほぼ一貫して海水温は上昇を続けています。特に2019年は、統計を開始した1891年以降2016年と並んで最も高い値でした。私たちが大好きなお刺身やお寿司も、これから大きく変貌していくことになるでしょう。