「ウイグル人権法案可決」

本日の東京新聞朝刊に、米上院本会議で、中国新疆ウイグル自治区で続くイスラム教徒への人権侵害に制裁を科す法案を全会一致で可決したとの記事が掲載されていた。

そもそも新疆ウイグル自治区と言われて、ピンとくる人は少ないでしょう。地図帳を開いてみると、中央アジアに位置し、中国全土の6分の1を占める広大な土地であると分かります。領内には広大なタクラマカン砂漠がありますが、日本の約4.5倍の広さがあります。元々中国の大半を占める漢民族とは異なるウイグル人の国で、言語も宗教も異なります。中国の首都北京から見れば、ウイグル自治区は辺境の地にあるのに、中国政府がなぜウイグル人に対し不当な拘束や拷問、信教の自由の否定などを行うのか、よく分からないでしょう。

皆さんは中学校か高校1年次に国語の授業で杜甫の「春望」を習ったことでしょう。「国破れて山河在り 城春にして草木深し」から始まる五言律詩です。唐の都長安がめちゃくちゃに破壊され、楊貴妃の愛欲に溺れた玄宗皇帝が都を逃げ出す安史の乱を描いた作品です。当時唐の役人(科挙に受かった超エリート)になったばかりの杜甫は、国そのものがなくなっていく不安で一夜にして白髪の老人になってしまいます。

中国の歴史は周囲の国との軋轢の歴史と言ってもよく、中央アジア出身の安禄山、史思明によってシルクロード貿易で栄えた唐が滅ぼされたり、モンゴル人の元や女真族の清などに支配されたりと、日本とは全く異なる政治観が形成されてきた。

そのため、現在の中国政府はウイグル自治区だけでなく、チベット自治区や香港、台湾を含め、「一つの中国」というナショナリズムを貫徹しようとします。新疆ウイグル自治区での人権侵害と、香港の独立を強圧的に押さえつけようとする動き、台湾に対する執拗な嫌がらせも同じ地平で見ていくべき問題です。

中国の問題になぜ米国が絡んでくるのかということについては、授業の中で触れたいと思います。