憲法記念日ということで、横田耕一『憲法と天皇制』(岩波新書 1990)を読む。
著者は、天皇制の歴史や、象徴としての是非は問わず、日本国憲法を前提とし、制度としての天皇制と憲法の整合性について丁寧に分析している。
日本国憲法の第1章では天皇の項目を設け、天皇は日本国民の統合の象徴であると明記している。しかし、同じ日本国憲法の第99条で、天皇は憲法を尊重し擁護する義務を負うとある。神道の総元締である天皇が政教分離を明確に定めた日本国憲法下において、宗教行為と国事行為をどのように分離されているのだろうか。大喪の礼における行為をひとつひとつ取り上げながら著者は日本国憲法支持の立場から国事行為と宗教行為の分離線を定めようとしている。右翼からは天皇の象徴性を汚す行為と指摘されるであろうし、左翼的な立場からは天皇制護持とも揶揄されるような研究に従事している著者の活動には頭が下がる思いである。
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『コックリさん』
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『ナイチンゲール』
長島伸一『ナイチンゲール』(岩波ジュニア新書 1993)を読む。
小学校時代に読んだ学研漫画を思い出すに、ナイチンゲールというと夜中に兵士にやさしく声をかける天使のような看護婦のイメージしか私にはなかった。しかし、実際のナイチンゲールは心優しい看護師というよりも、社会における看護師の地位向上、医師との分業体制を確立しようと近代看護学の先駆者と称されるべきであろう。彼女はそのために統計学を駆使し、英国陸軍の編成上の問題やインドにおける英軍のありかたについても意見を述べている。天使のような看護師という一面的な見方だけでは彼女に対する評価を誤ってしまう。彼女は自著『看護婦覚え書き』の中で次のように述べている。
女性にとっては神も国家も義務もなく、ただ家庭があるのみ。私は女子修道院をたくさん知っているが、そこではもちろん、けちな専制政治が行われているとみんなが噂している。しかし私は、イギリスの上流階級で行われている圧制ほど醜いものを知らない。
私が(イギリス国教会の)福音主義派に不満を感ずるのは、彼らが「家庭」の婦女子にたいして押しつけてきた要求……つまりかれらが捏造してきた偶像だ。……こうした矛盾は上流階級の生活だけに見られる。そのひとつの理由は、上流階級には下層階級よりもはるかに「ことなかれ主義」が横行しているからである。








