『憲法と天皇制』

 憲法記念日ということで、横田耕一『憲法と天皇制』(岩波新書 1990)を読む。
 著者は、天皇制の歴史や、象徴としての是非は問わず、日本国憲法を前提とし、制度としての天皇制と憲法の整合性について丁寧に分析している。
 日本国憲法の第1章では天皇の項目を設け、天皇は日本国民の統合の象徴であると明記している。しかし、同じ日本国憲法の第99条で、天皇は憲法を尊重し擁護する義務を負うとある。神道の総元締である天皇が政教分離を明確に定めた日本国憲法下において、宗教行為と国事行為をどのように分離されているのだろうか。大喪の礼における行為をひとつひとつ取り上げながら著者は日本国憲法支持の立場から国事行為と宗教行為の分離線を定めようとしている。右翼からは天皇の象徴性を汚す行為と指摘されるであろうし、左翼的な立場からは天皇制護持とも揶揄されるような研究に従事している著者の活動には頭が下がる思いである。

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