アグネス・チャン『みんな地球に生きるひと Part3:愛、平和、そして自由』(岩波ジュニア新書,2007)を読む。
日本ユニセフ協会大使として、タイやフィリピンの児童買春、カンボジアやモルドバの児童売買、戦争に苦しむスーダンやイラク、エイズが蔓延するレソトを訪れ、一番犠牲になるのは子どもたちであると報じている。次の一節が印象に残った。中学生高校生に良く伝わる文章である。
多くの戦争がそうです。
民主主義や解放とはぜんぜん関係ありません。
中東に不安定な状態が続けば、得をするのはアメリカです。イスラエルとサウジアラビアはアメリカの武器をたくさん買ってく れます。アジアも安定したら武器が売れなくなる。
だからアメリカは北朝鮮となかなか対話しません。北朝鮮があばれればあばれるほど韓国も日本も、 武器を買うようになります。中国が脅威だと言えば、 台湾が武器を買う。とにかく武器がいちばんもうかるのです。 不安を煽るのが商売の人がいるのです。 それでもうかる人がいる限り、テロも戦争もなくなりません。
そういう人たちは、多くの子どもたちを死なせてまで、一つの国家をズタズタにしてまで、石油やお金が欲しいのです。 最近では、せっかく軍縮に向かっていた世界が、
こういう人たちのやり方によって軍拡に向かいつつあります。 核軍拡まで、現実になろうとしているのです。
戦争のために、どんなにお金と時間を使っても、何も人類のプラスにはならない。この当たり前のことを、今一度、 みんなで真剣に考えなければならないと思います。 ひとつの強国に振りまわされるのではなく、国連の枠組みの中で、 ねばり強く話し合いを続けること。そして武力ではなく、 あくまでも話し合いで国際間の問題を解決していくこと。 それが犠生となった多くのイラクの人々の死を無にしない、 唯一の方法だと思います。
