堀淳一『地図を旅する:一枚の地図から広がるロマン』(創隆社 1991)を読む。
久しぶりに時間を忘れて読みふけった。元は1981年に刊行された本なので、共産圏の大縮尺の地図は手に入らないとか、ステレオ写真の作り方など、かなり古い情報も多いが、省略の多い地図からリアルな世界を想像する地図に魅力は、Googleマップやストリートビューが当たり前になった現在でも変わらない。
地図の場合は写真よりも現実とのギャップが大きいだけに、想像力を働かせる余地が大きいのが一つの面白さだし、そのためになおさら好奇心がそそられる、ということもある。時によっては、下手な写真にひきずられるよりは、地図の上で自由に想像力を働かせるほうが、よほど現地の雰囲気にピタリとしたイメージを描けるということも、またあるだろうね。今いったように、大事なのはこまかい事柄よりもむしろ全体的な、漠然と感じられる雰囲気なんだから、地図からの想像のほうがはるかに真実をつくることだってあるわけだ。
(中略)風景の味わいをただ受け身で発見するだけではなく、風景の中にひたりながらそれに積極的に働きかけて、自分なりの心象風景、つまりイメージの世界を創り出すたのしさーこれが旅の醍醐味だとおじさんは思っているんだ。
(中略)風景の中に没入し、それに働きかけて自分なりのイメージの世界を創りだすことは、地図と直接関係ないけれども、先入観念に邪魔されず風景をいわば「手づくり」することのできる場所をさがすためには地図が、そして地図の上でイマジネーションをはばたかせることが必要なのだから、やはり地図が土台になっているわけだ。