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『のぼうの城』

第139回直木賞(2008年上半期)ノミネート、2009年の第6回本屋大賞第2位、和田竜『のぼうの城』(小学館 2007)を読む。
前半少しだけ読んで、あまり乗り気になれなかったのでうっちゃっていた本である。先日忍城を尋ねたので、もう一度手に取ってみた。半分ほど読んだ所、忍城側の抵抗が始まった場面から、もう止まらなくなり最後まで一気読みだった。宣伝文句に「ハリウッド映画の爽快感!」とあったが、後半から城に籠もった士族や百姓だけでなく、読者も含めて危険な賭けに出る城代長親に惚れていく。フィンクションなのだが、石田三成のイメージがガラリと変わった。

また、石田三成が水攻めを提案した際の大谷吉継のセリフが印象に残る。

治部少(三成)、何ゆえの水攻めだ。水攻めなど、合力の諸将が手柄を立てる機会がなくなるではないか。おのれは総大将なのだぞ。部将の心を獲らずしてなんとする

武士にとって、近世以前の合戦はルールに則って戦功を挙げ、分かりやすい形で記録に残し、恩賞を勝ち取る真剣勝負の仕事の現場だと改めて理解した。