竹信三恵子『ピケティ入門:『21世紀の資本』の読み方』(金曜日 2014)を読む。
ピケティの経済の専門書『21世紀の資本』をばっさりと要約した上、日本の格差拡大の現状分析に用いるという内容で、知ったかぶりをしたいだけの私にぴったりの著書であった。
ざっくりまとめると、ピケティはある国の資産の蓄積度を「資本/所得比率」で計算し、さらに、「貯蓄率/経済成長率」が資産の蓄積度と一致することを明らかにしている。そして戦争時を除いて、経済成長率よりも貯蓄率の方が上回るため、資産の蓄積度は自然と上昇していく。そこで、格差を縮小する相続税や所得税といった税制やインフレ政策が必要だと説く。
金持ちがますます金持ちになり、貧困層が固定化されてしまう現代社会に対し、ピケティは、所得税の累進税率の強化を訴える。しかし、それだと税率の低い国へ企業も資産家も逃げてしまう。そこで、ピケティは住宅や不動産、金融資産などすべての資産に対し、世界的なネットワークで課税する「世界的資本税」を提案する。
日本も累進課税の引き下げにより、資本/所得比率が上昇している。1970年には3だったものが、1990年には7に増加している。「成功者は高所得を貰って当然」とか「貧困は自己責任」といった感情的な格差論を廃し、制度的に格差を縮小していく一歩を歩み出していくべきだと著者は述べる。