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『地名で読むヨーロッパ』

梅田修『地名で読むヨーロッパ』(講談社現代新書 2002)をパラパラと読む。
著者は執筆当時流通科学大学情報学部教授を務めており、英語学の専門家である。ギリシア語やラテン語に起源を持つ言葉が、人の移動と軌を一にして欧州全域に広まっていく点について詳細に語る。但し、あまりに細かすぎて読む気力は萎えてしまった。いくつか気になった点を拾っておきたい。

ギリシア神話では、はじめに全ての要素を含んだガスのようなものが渦巻く混沌カオス(Chaos)があった。次にカオスが一人で神々の御座である大地ガイア(Gaia)を産み、そのガイアは、天の神ウラノス(Uranus)を産むと、ガイアとウラノスが結ばれ、大洋オケアノス(Oceanus)をはじめ、次々と自然が形となって誕生する。
Gaiaは母なる大地であり、女性名詞である。そのため大陸名も女性名詞が使われている。エルローパ(Europe)、アシア(Asia)、メソポタミア(Mesopotamia)や、また、ラテン語のガッリア(Galia)、ブリタンニア(Britannia)、ゲルマニア(Germania)など、女性名詞の特徴である”−a”や、”−ia”が付いている。

Atlantic(大西洋)は、アフリカ北西部のAtlas(アトラス)山脈から派生した地名である。神話の世界でAtlasはオリンポスの神々に敵対したとして、西の果てで永久に天を支える罰を受ける。大航海時代に入ると地球が球体であると実際に証明されたので、航海図を完成させたメルカトルの死後、息子が父の完成した地図をAtlasと名付けた。

キプロス島は、フェニキア人が最も早く植民地を開いた所で、紀元前3000年ごろの遺跡さえ確認されている。地名キプロス(Cyprus)はギリシャ語Kypros(銅)に由来するもので、このギリシャ語は英語Copperの語源ともなっている。現在でもキプロス島では銅が産出されている。

ギリシャ人が特に欲しがったのは錫でした。銅に10%の錫を混ぜると青銅ができます。

『科学の目 科学のこころ』

長谷川眞理子『科学の目 科学のこころ』(岩波新書 1999)を読む。
ダーウィンについて少し書いてあったので手に取ってみた。著者は動物の行動生態学を専門としており、現在は総合研究大学院大学学長を務めている。執筆当時は専修大学法学部で一般教養科目を担当しており、本書も文系の学生向けに、生物学を中心に分かりやすい科学の入門エッセーとなっている。

米ソの軍拡競争から生物同士の競争について展開するくだりが面白かった。具体例に挙げられていたカッコウという鳥は、自分でヒナの世話をせず、ウグイスなどの多種の鳥の巣に卵を産み込み、その種に世話を任せる。そんなものを引き受けさせられたほうは困ったものなので、カッコウを追い払う。そこで、カッコウは、非常に巧妙に卵を産み込む手段を開発する。まず、宿主の鳥のいないときを見計らって、その鳥の卵を一つ放り出し、そこへ自分の卵をあっという間に産み付けるのである。

宿主の鳥の方も騙されてばかりではなく、カッコウの卵を見分けて放り出すこともある。しかし、カッコウの方もそれに対応して宿主の卵と酷似した卵を産むようになる。挙げ句の果てには生まれたカッコウのヒナの鳴き声も宿主の本来のヒナの一腹分、すなわち5羽か6羽の全部が一斉に餌ねだりをしている声にそっくりなのである。