日別アーカイブ: 2018年8月12日

『本居宣長」

羽賀登『本居宣長:人と歴史・日本 22』(清水書院 1972)を読む。
江戸中期の国学者本居宣長について、著作の言葉の端々を拾い集め、人となりを丁寧に説明している。本居宣長というと、古事記や源氏物語などの生粋の日本の文化を研究している文学者というイメージが強かった。しかし、実際は極めて「原理主義」的な人物で、中国伝来の仏教や儒教を徹底して排撃し、天照大神由来の日本神道の示す情の世界に帰るべきだとの主張を、生涯に亘って繰り返している。

『万葉考』や『国意考』を著した賀茂真淵に師事し、直接に著作についての指導を受けている。一方、時代は少しずれるが、柳澤吉保の儒臣となり、孔子や孟子などの古典研究に勤しんだ荻生徂徠への舌鋒は鋭い。天下の制度を漢風に変質させたと、大化の改新にも懐疑的な見解を示している。また、貨幣経済は「世上困窮の基」であるとし、農本主義的な理想主義者でもあったようだ。

また、ややこしいことに、徳川幕府を支える朱子学は批判するが、朝廷が正式に征夷大将軍の任を与えた徳川幕府には忠誠を誓うべきだとも述べる。

宗教でも政治でも学問でも、取り戻せない過去を理想化し、現実の諸相を頭ごなしに否定する「原理主義」的な態度には与したくないと思う。

『女おとな旅ノート』

堀川波『女おとな旅ノート』(幻冬舎 2011)を読む。
イラストレーターを生業とする著者が、国内外の旅で見つけたおしゃれな着こなしや雑貨について語る。
旅コスメやカフェなど私自身が全く興味がないものばかりなので、後半はさらっと読み飛ばした。
著者も殊更女性感覚を強調するので、感性に関する男女間の深い溝を実感した。

御茶ノ水・湯島散策


本日も駿台セミナーの受講で、御茶ノ水の駿台校舎を訪れた。浪人生時代を過ごした町であるが、明治大学記念館も名物の立て看もなくなり、寂しい風景に感じる。


お茶の水橋からの風景。付近の案内看板によると、この界隈を「駿河台」という所以は、「家康が駿河で没した後、家康付きを解かれ、駿河から帰ってきた旗本(駿河衆)たちが、江戸城に近く富士山が望めるこの地に多く屋敷を構え」「駿河衆が住んでいたことや駿河国の富士山が見えたことなどから、この地は『駿河台』と呼ばれるように」なったとのこと。



お茶の水橋を越えて、昌平坂学問所跡に立ち寄った。孔子像が迫力満点であった。



湯島聖堂の裏手にある神田明神に立ち寄る。何かアニメのコラボイベントがあるようで、家族連れやカップルだけでなく、コミケに居そうな若者の集団が目立った。敷地内に「国学発祥の地」という記念碑があった。荷田春満が江戸で最初に江戸に出て初めて国学を説いたのが神田神社神主の芝崎邸内であったことに由来するとのこと。やや牽強付会な感は否めない。


少し遠回りをしながら、湯島天満宮に辿り着く。5世紀半ばの創建で、学問の神様菅原道真を祀る伝統ある神社である。湯島聖堂の周囲は大学ばかりだったが、湯島天満宮の周囲にはカップルズホテルが立ち並んでいた。湯島天満宮と湯島聖堂、どちらも学問の神様を祀っているので混同しがちだが、実際に歩いて参拝すると、周囲の風景から違いが見えてくる。