2018年7月20日付の県教委だより(第705号)に、川口市に県内初の夜間中学が、市立芝西中学校の分校として来年4月に開校するとの記事が掲載されていた。平日17時頃~21時頃まで授業等を実施し、中学校の全教科を履修する。入学対象者は、県内に住む16歳以上で、①小学校や中学校を卒業していない方②中学校を卒業した方のうち、学び直しを希望する方③原則、在留資格のある外国籍の方のいずれかに該当する方となる。この夜間中学では、県内全域から生徒を受け入れることから、埼玉県としても川口市を積極的に支援すると明記されている。
市民団体が長らく運動を展開したこともあり、喜ばしい内容である。川口は県南地域にあり、埼玉県全域からの交通の便も良い。東京や神奈川、千葉に比べて「後発」となった分だけ、充実した教育内容であることを期待したい。また、国や県に先駆けて市がイニシアチブを取ったということも素晴らしい。特に、今後増加傾向にある外国籍の子どもの教育を担保する模範例となってほしい。
夜間中学とは
中学校において夜の時間帯に授業が行われる夜間学級のことです。義務教育を修了しないまま学齢期を超過した方、日本国籍を有しない外国籍の方、不登校等により十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した方等に対して教育の機会を提供します。(記事より)
参考 2018年5月9日付 東京新聞
「夜間中学 全国に広がれ 県内初 川口市に来春開校」
川口市は、県内初の公立夜間中学を来年4月に市内に開校する。市はずっと夜間中学に後ろ向きだったのに、開設を決めた背景に何があるのか。「県内に公立夜間中学を」と運動してきた市民団体が、直近の経緯をまとめた書籍を刊行した。前川喜平・文部科学省前次官が、2年前に川口市内での集会で「夜間中学の役割は非常に大きい」と語った講演も収録されている。(杉本慶一)
書籍のタイトルは「夜間中学と日本の教育の未来」。市民団体「埼玉に夜間中学を作る会」と、川口市内でボランティアが運営する「川口自主夜間中学」が編集を手掛けた。公立の夜間中学は、戦後の混乱期に貧困で小中学校に通えなかった人のために開設された。今は八都府県に三十一校あり不登校のまま中学を卒業した人や、日本語の習得を目指す外国人が多く学んでいる。
首都圏は東京や神奈川、千葉にあるものの、埼玉にはない。このため野川義秋さん(70)らが一九八五年に「作る会」を立ち上げ、自主夜間中学もスタートさせた。作る会は街頭での署名集めとともに、川口市や県に繰り返し開設を求めた。しかし、「市も県も前向きではなく、膠着(こうちゃく)状態が続いていた」(野川さん)。
大きな転機は、二年前に議員立法で成立した教育機会確保法だった。義務教育を十分に受けられなかった人に夜間中学などで学ぶ機会を自治体が提供する、との条文が盛り込まれた。ただ、夜間中学の開設を義務付けたわけではない。県内自治体の動きを注目する野川さんらに朗報が飛び込んだのは、昨年三月だった。川口市の奥ノ木信夫市長が「市が夜間中学を開設する」との考えを初めて明らかにしたのだ。
書籍は、その前後の経緯を詳しく紹介。さらに、教育機会確保法が成立する二カ月前、「作る会」などの集会に招かれた前川さんの講演を全文掲載した。
次官在職中だった前川さんは、夜間中学について「憲法の求める教育を受ける権利の保障、義務教育の保障、それを現実に実現するうえで非常に重要な役割を負ってきた」と指摘。「私は若いころからずっと(夜間中学の取り組みを)非常に貴重だと思いながら仕事をしてきた」と語っている。「作る会」によると、公立夜間中学の開設運動は北海道や福島県などでも行われている。文科省は「各都道府県に少なくとも一校設置を」と呼び掛けており、野川さんは「他県での実現に向けて、この本が役に立てば」と期待している。
「夜間中学と日本の教育の未来」は四六判で百八ページ。定価千五百十二円。各地の書店などで販売中。販売に関する問い合わせは、発行元の東京シューレ出版(東京都江東区)=電03(5875)4465=へ。
◆今夏から生徒募集
川口市教育委員会は、来年四月に開校する市立夜間中学について、今年八月~来年一月に入学希望者を募集する予定だ。学齢期を過ぎて県内在住・在勤の日本人や外国人を対象に、二百四十人程度の受け入れを想定している。開校時の校舎は、廃校になった旧県陽高校(川口市並木一)の建物を改修して利用する。二〇二一年四月からは、旧芝園小学校(同市芝園町)の敷地に建設する新校舎に移る予定だ。
県と川口など十二市は昨秋、夜間中学のニーズを把握するためのアンケートを行った。回答者は千二百四十六人(うち約半数が外国籍)。夜間中学に「通いたい」と答えた人は全体の三割で、そのうち八割近くを外国籍が占めた。奥ノ木市長は、開設を決めた理由について「市内に住む外国人は県内で最も多く、市がニーズに応えるべきだと判断した」としている。