大石慎三郎監修・後藤一著『田沼意次 人と歴史・日本 21』(清水書院 1971)をさらっと読む。
田沼意次というと、賄賂や天明の大飢饉による政策の失敗など、負のイメージが強い。しかし、そのほとんどは根拠のない噂や捏造されたものであり、著者は寛政の改革を進めていく中で、スケープゴートとして喧伝された側面が強いと述べる。
田沼意次時代は政治的にも文化的にも自由な雰囲気が溢れていたのだが、松平定信の時代に入ると政治的には倹約、文化的には統制が打ち出される。そうしたストイックな政策をゴリ押しするために、一昔前のルーズな田沼政治が実際以上に否定的に捉えられたのではないか。田沼意次再評価の先鞭を付けた内容となっている。