日別アーカイブ: 2014年1月30日

「ウィ・シャル・オーバーカム」

本日の東京新聞朝刊コラムに、「will」と「shall」の違いに触れながら、1950、60年代に人種差別解消を求めたアメリカ公民権運動のテーマソングともなった「ウィ・シャル・オーバーカム」の曲を歌ったフォーク歌手ビート・シーガーさんが、今月27日に94歳で亡くなったという話が掲載されていた。元々この歌の原曲は、黒人のチャールズ・アルバート・ティンドリー牧師が1901年に発表した霊歌であり「アイ・ウィル・オーバーカム・サムデー」といったそうだ。主語は「私」だけであり、助動詞も「shall」よりも消極的な意味合いの「will」だった。しかし、ある黒人女性の「こっちの方が好き」と言ったのがきっかけで、現在の曲名になったそうだ。
曲を口ずさむと、童謡や地方歌のような生活感と、メッセージの力強さが心の底からわき上がってくるような雰囲気を感じる。革命歌として「K点」越えであろう。ソチゆえに寛大な措置を(ノッさん風で)。

『共喰い』

第146回芥川賞受賞作、田中慎弥『共喰い』(集英社 2012)を読む。
表題作の他、短編『第三紀層の魚』が収録されている。
どちらも作者の生まれ育った山口県下関市を舞台にしている。『共喰い』の方は、作者と同じく昭和63年7月に17歳の誕生日を迎えた高校生が主人公であり、『第三紀層の魚』も、作者と同じく4歳で父親を亡くした少年の心模様がテーマとなっている。
特に、『共喰い』の方は、セックスや暴力をを通した父と息子の水面下の対立が克明に描かれており、古き良き時代の昭和の日活ロマンポルノの脚本を読んでいるような印象深い作品であった。