大阪商業大学学長・総合経営学部教授を務める谷岡一郎『40歳からの知的生産術』(ちくま新書 2011)を読む。
先日読んだサラリーマン向けのステップアップの勉強術ではなく、研究を職業とした若きエリート大学人を読者層に想定した少し毛色の変わった内容であった。論文作成の効率的な時間の使い方や、クリエイティブなアイデアを論文にまとめるための情報整理術などが少々辛辣な語り口でまとめられている。あまり首肯するところは少なかったが、次の読書術についての一節は印象に残った。引用してみたい。
筆者自身の経験から確信していることの一つとして、「本を読まない人間は、人類に新しい知見を加えることはできないだろう」ということがある。(中略)下世話な言い方をするなら、「偉くなりたかったら、本を読みなさい」というのは、真理だと考えるのである。(中略)私が考える正しい言い方はこうだ、「本の好きな人だけが、偉くなれる」。つまり、「本の嫌いな人がいくら本を読んでも、偉くなれるわけではない」と考えているわけで、偉くなる人の条件として、まず「本が好きになる」ことが必要条件なのである。
筆者は上記のように述べた上で、ひたすら乱読からスタートし、徐々に厚い本が読めるようになるテクニックを用いつつ、好きな批評家の本にあたりながら、読書記録を付けていくことを提唱する。ごちゃごちゃと読書について斯くあるべしと述べるよりも、「とにかく読め」というスタイルは好感が持てる。