日別アーカイブ: 2013年11月13日

大学案内研究:城西大学

城西大学・城西短期大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
ウェブで調べたところ、城西中学高等学校は、大正自由教育運動で有名な野口援太郎氏が創設した「池袋児童の村小学校」の系譜を受け継いでいる。「池袋児童の村小学校」自体はすぐに閉鎖を余儀なくされたが、1925年に城西実務学校に教育者野口援太郎を第2代校長に迎えている。西武池袋線椎名町にある城西中学高等学校では、現在でも創立者の精神に触れた教育方針を掲げている。
中学高校を母体として、1965年に東武東上線川角駅から徒歩8分の場所に、経済学部経済学科と理学部数学科・化学科で構成される城西大学が創立されている。1973年に薬学部、1983年に女子短期大学が開設されている。1992年には姉妹校として千葉県東金市に城西国際大学を設立している。現在では経営学部マネジメント学科、現代政策学部現代経済システム学科、経済学部経済学科、理学部数学科・化学科、薬学部薬学科・薬化学科・医療栄養学科と短期大学で構成されている。2005年に城西国際大学と共用する東京紀尾井町キャンパスが開設され、理学部数学科と短期大学は入学後に坂戸キャンパスと紀尾井町キャンパスを選択できる仕組みになっている。
海外の大学との交流協定やら海外の文化勲章受賞式が派手に紹介され、創価大学のパンフレットかと思うほど理事長が全面に出ている。創立者の水田三喜男は池田勇人内閣の大蔵大臣を務めた著名な人物であるが、その水田氏が蒐集した浮世絵を展示する美術館や資料館、はたまた生家までがパンフレットで紹介されているのは如何かと思う。
帝京大学の後追いなのか、城西国際を含めると、東京・埼玉・千葉の3県に5カ所のキャンパスが置かれ、看護やらメディアやら観光などの目新し学部がどんどん開設されている。理学部数学科に至っては同じ大学の同じ学部学科に所属しているにも関わらず、キャンパスが4年間別々のまま卒業を迎える。駅伝や陸上、硬式野球といった強化指定クラブで大学のイメージ戦略を図る一方で、学生が自分のアイデンティティを投影する大学という場がどんどん希薄化されてしまっている。今後の発展が怖い大学である。

「指導者は人間教育ができなければいけない」

「Joint-Success」第30号(JSコーポレーション 2013年10月)に掲載されていた長崎総合科学大学教授小嶺忠敏氏へインタビュー記事を読む。
指導者論についてのコメントを引用してみたい。
小嶺氏は指導者としてあるべき信念について次のように語る。

指導者と生徒・選手は競争関係にあると考えています。教えるとか教わるということより、指導者が率先して示していくことが大事だと思います。人としての礼儀はもちろん、決められたルールは守る、遅刻はしないなど、指導者が基本的なことを示してやること。これが原点です。

また生徒・選手との競争関係の中で、具体的な指導法について次のように語る。

選手にあわせて、各々指導方法があるんです。彼らはみんな性格も能力も違いますから、選手の数だけ指導法があるのではないでしょうか。指導者の役割は、一人ひとりの性格や能力を分析し見極めていくことです。長所があれば伸ばしてやる、短所があれば修正するよう一緒に努力する。そうすることで、彼らは自信を持てるようになって、ドリブルの上手い選手、足の速い選手、パワーのある選手といったように、それぞれ特性を活かした選手が育つわけです。その集合体がチームです。

さらに、小嶺氏は生徒・選手たちの接し方について次のように語る。

まずは自分がグラウンドに出ることです。一緒に練習して、同じ長い時間を共に過ごす。すると「こいつには、こんな持ち味があったのか」と、その個性に気づく局面があります。ならば、この個性を伸ばすためのトレーニングを考えてみよう、となります。また、寮で一緒に生活すると、練習では見えていなかった性格がよくわかります。同じ時間を過ごし、話したり観察することが大事です。プレーを一瞬見ただけで、その選手を理解できる指導者は天才ですよ(笑)。時間をかけて彼らを知る努力をするのが私のやり方です。

また、もう一つ大事な点とである「3つの目線」を使い分けについて、次のように述べる。

1つは上から目線でビシッと厳しく、グラウンドでチームの約束事を教え込む目線。2つ目は対等な目線。技術を憶えさせて自由自在に動けるように育てる目線です。3つ目は選手が悩んだり迷ったときに寄り添って話を聞いて励ましてやれる下からの目線です。指導者はこの3つの目線を上手に使いこなさなければいけません。指導する側もいろんな努力をしなければ選手たちに思いは伝わりません。努力する情熱を持った指導者は、すごく魅力的です。その魅力がなければ、選手たちはついてきませんよ。

また、指導者の役割として次のように述べる。

サッカーだけが上手くても駄目です。選手一人ひとりの人間性も、強いチームには不可欠です。特に高校時代は人間としての基礎を磨く時期。だからこそ人間教育が大切なんです。その基本が「挨拶」、「返事」、「後始末」。普段の練習や遠征先、試合においても基本ができなければ、良いチーム、強いチームには育ちません。スポーツの指導者は、人間教育ができなければ二流だと思います。我々指導者が守るべきことは、彼らを使い捨てにしてはいけないということです。卒業後の進路、就職でも進学でも、将来をちゃんと見据えて指導してあげないといけません。一生懸命やってきた生徒・選手たちをちゃんと出口まで指導してあげるべきです。ですから、私も社会人や大学チームへ選手を紹介する努力は惜しみません。責任を持って彼らを次の世界へ送り出すのは我々指導者の務めではないでしょうか。