洗足学園大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
スマホで読み取るとさらに細かい情報が出てくる仕組みになっており、延々と講師の紹介やらが続く他音大と比べてシンプルで良い。
すっかり音大のイメージが強いが、元々は裁縫女学校を母体とし1926年創立の高等女学校であり、現在も東大4人を含む国公立に60名弱を排出する中学高等学校がその系譜を受け継いでいる。大学の方は、1962年に開設された洗足学園短期大学音楽科が元になり、1967年に設立されている。短大の方は現在では音楽科が廃止され、音楽教育が充実した幼児教育保育学科のみとなっている。
音楽に特化した大学、幼児教育に特化した短大、そして進学校の中学高等学校と、それぞれの特徴を絞り込みながら、オールインワンキャンパスのメリットを生かす形でうまい運営が行われている。元々は目黒区洗足に学校が置かれたが、1946年に現在地の川崎市高津区久本に移転している。おそらく当時は片田舎の郊外であっただろうが、現在は渋谷から急行で13分、東急田園都市線とJR南武線の2路線が使える溝ノ口駅から徒歩8分の至便な場所にある。幼稚園から大学院まで全て同地にキャンパスが置かれ、音大のホールで行われる演奏会やライブなどが学園全体の教育活動に寄与している。親族経営であるものの、早々と目黒区洗足にあった中学高等学校を廃止してビル用地に転売したり、富山県に作った短大や横浜に作った校舎なども2000年以降廃止するなど、上手く時代の流れを読んだ経営判断がなされている。特に創立者の出身地に設けられた洗足学園大学魚津短大であるが、まだ定員の6割を確保している余裕のあるうちの閉校判断である。ウェブで調べたところ、2万坪の敷地と10億円相当の校舎は魚津市に無償譲渡されたとのこと。
歌手平原綾香さんの出身校であったり、また、ドラマ「のだめカンタービレ」の撮影場所となったりと、一般の人の知名度も高い。教育方針の一つに「演奏・本番の重視」を掲げており、アンサンブルや演奏会の機会が数多く設けられており、個人の専門の器楽の演奏技術の向上だけでなく、音楽を通じた集団の中での状況把握やコミュニケーション能力の育成に重きを置いている。音楽学部の一学部であるが、その中に管楽器、打楽器、弦楽器、ピアノ、声楽、現代邦楽、作曲、オルガン、クラシックギター、ジャズ、ロック&ポップス、音楽・音響デザイン、ミュージカル、電子オルガン、音楽教育の15のコースが設けられている。オーケストラや吹奏楽だけでなく生楽器と電子オルガンのアンサンブルや邦楽ミュージカル、オペラなど、コースを越えた合奏授業が展開されている。
また、パンフレットに816万円の4年間合計の学費や30万円の教職課程履修費が分かりやすく明記されているのもよい。定員420名の内、300名をAO入試で選考している。倍率も1.1倍程度であるが、定員はしっかりと確保されている。2012年には自衛隊音楽隊へ全国トップの9名が合格している。誠実な大学の姿勢や環境は、明確な目的を持っている学生にとっては充実した4年間となるであろう。