「Joint-Success」第30号(JSコーポレーション 2013年10月)に掲載されていた長崎総合科学大学教授小嶺忠敏氏へインタビュー記事を読む。
指導者論についてのコメントを引用してみたい。
小嶺氏は指導者としてあるべき信念について次のように語る。
指導者と生徒・選手は競争関係にあると考えています。教えるとか教わるということより、指導者が率先して示していくことが大事だと思います。人としての礼儀はもちろん、決められたルールは守る、遅刻はしないなど、指導者が基本的なことを示してやること。これが原点です。
また生徒・選手との競争関係の中で、具体的な指導法について次のように語る。
選手にあわせて、各々指導方法があるんです。彼らはみんな性格も能力も違いますから、選手の数だけ指導法があるのではないでしょうか。指導者の役割は、一人ひとりの性格や能力を分析し見極めていくことです。長所があれば伸ばしてやる、短所があれば修正するよう一緒に努力する。そうすることで、彼らは自信を持てるようになって、ドリブルの上手い選手、足の速い選手、パワーのある選手といったように、それぞれ特性を活かした選手が育つわけです。その集合体がチームです。
さらに、小嶺氏は生徒・選手たちの接し方について次のように語る。
まずは自分がグラウンドに出ることです。一緒に練習して、同じ長い時間を共に過ごす。すると「こいつには、こんな持ち味があったのか」と、その個性に気づく局面があります。ならば、この個性を伸ばすためのトレーニングを考えてみよう、となります。また、寮で一緒に生活すると、練習では見えていなかった性格がよくわかります。同じ時間を過ごし、話したり観察することが大事です。プレーを一瞬見ただけで、その選手を理解できる指導者は天才ですよ(笑)。時間をかけて彼らを知る努力をするのが私のやり方です。
また、もう一つ大事な点とである「3つの目線」を使い分けについて、次のように述べる。
1つは上から目線でビシッと厳しく、グラウンドでチームの約束事を教え込む目線。2つ目は対等な目線。技術を憶えさせて自由自在に動けるように育てる目線です。3つ目は選手が悩んだり迷ったときに寄り添って話を聞いて励ましてやれる下からの目線です。指導者はこの3つの目線を上手に使いこなさなければいけません。指導する側もいろんな努力をしなければ選手たちに思いは伝わりません。努力する情熱を持った指導者は、すごく魅力的です。その魅力がなければ、選手たちはついてきませんよ。
また、指導者の役割として次のように述べる。
サッカーだけが上手くても駄目です。選手一人ひとりの人間性も、強いチームには不可欠です。特に高校時代は人間としての基礎を磨く時期。だからこそ人間教育が大切なんです。その基本が「挨拶」、「返事」、「後始末」。普段の練習や遠征先、試合においても基本ができなければ、良いチーム、強いチームには育ちません。スポーツの指導者は、人間教育ができなければ二流だと思います。我々指導者が守るべきことは、彼らを使い捨てにしてはいけないということです。卒業後の進路、就職でも進学でも、将来をちゃんと見据えて指導してあげないといけません。一生懸命やってきた生徒・選手たちをちゃんと出口まで指導してあげるべきです。ですから、私も社会人や大学チームへ選手を紹介する努力は惜しみません。責任を持って彼らを次の世界へ送り出すのは我々指導者の務めではないでしょうか。