日別アーカイブ: 2013年11月11日

大学案内研究:西武文理大学

西武文理大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
「西武」と名が付くものの西武グループとは関係なく、「文理」と付くものの文学部も理学部もない
1999年にサービス経営学部サービス経営学科を置き、「サービスを学問する」という一風変わった特徴を掲げて設置された新しい大学である。2007年に健康福祉マネジメント学科が増設され、さらに2009年に看護学部が開設されている。「ホスピタリティ」を重視しており、サービス産業、福祉産業、看護の別を問わず、「おもてなし」の心を持った「接客」のプロの養成を目的としている。
西武新宿線の新狭山駅からスクールバスで8分という不便な場所にある。ただし、同敷地内に中学校と高等学校があるため、スクールバス網は整備され、西武池袋線の稲荷山公園駅、JR青梅線と八高線の東飯能駅、東武東上線の川越駅と鶴ヶ島駅、JR埼京線の川越駅の5つの駅からそれぞれスクールバスが運行している。

パンフレットを読む限り、典型的な国道16号沿いの「郊外型」大学の特徴そのものである。奨学金の充実や取り組みやすいAO入試、秋田県立能代高校のコーチを招聘し指定強化のバスケットボール部、ブライダルプランナーや旅程管理主任者、赤十字救急法救急員などの眉唾な資格、また資格取得援助奨学金、実卒業者より2割も低い就職希望者など、かつて読んできた大学とほぼ同じ内容が網羅されている。また学食のメニューや川越のおしゃれなお店などの紹介写真もすでに定番となっている。

敷地内に狭山市と川越市の市境が通っており、パンフレットでは「狭山キャンパス」と「川越キャンパス(狭山キャンパス隣接)」と2つの住所が併記されている。
サービス経営学部の方は、形だけの共通科目と、ただ配列されただけの専門科目がカリキュラムとして紹介されている。ブライダルや観光の専門学校と大差ない。いやキャンパスの場所などを考えると、専門学校の方が上か。
看護学部の方は、入試でも4倍近い数字があり、新設校の割には幸先の良いスタートを切っている。

さぞかし定員割れをしているのだろうと思いきや、大学全体では収容定員を上回る学生が集まっている。不思議な大学である。

『国見発 サッカーで「人」を育てる』

小嶺忠敏(長崎総合科学大学情報学部経営情報学科教授・長崎総合科学大学および同附属高等学校サッカー部総監督)『国見発 サッカーで「人」を育てる』(NHK出版 2004)を読む。
武専のレポート「指導者論」を書くに当たっての参考文献として手に取ってみた。
執筆当時、長崎県立国見高校校長職にあった小嶺氏が、指導者のあり方や、高校サッカーを闘うためのチーム作りの妙や高校教師としての教育観を語る。印象に残った点を引用してみたい。

指導者というのは、赤ん坊が自然に生まれてくるときに立ち会う”助産婦”のようなもの。つまり、指導者の役割は選手が悩んでいるときに、「こんなこともあるよ。こんなふうに考えられるよ」と、ヒントを出すことです。それがきっかけとなり、選手が自分で考えて、自分の力で大きく伸びていく。それが人を育てることだと思います。

サッカー部に入ると、ほとんどの選手はレギュラーポジションを目標にします。しかし、サッカー部で3年間を過ごす真の目的は、「人生の勝利者になること」です。私はよく、生徒に言っています。
「レギュラーになった、ならないというのは、高校時代の3年間のこと。人生90年のたった3年間です。私たちは、タケノコと一緒のようなもの。太陽の光と土の養分を吸収して伸びていき、冬の寒いときは根を長くしていく。高校時代にレギュラーになった人はここで花が咲いたわけだが、残りの人生でも花を咲かせなくてはいけない。
たとえレギュラーになれなくても、高校で3年間、サッカー部で練習してきた結果、すばらしい人生を歩むための根を手に入れることができるのです。養分をたくさん蓄えた根を持って磨いていけば、高校を卒業後にかならず枝が出て、大輪の花を咲かせることができます。高校の部活動でレギュラーにならなかったけれど、卒業してから立派な花を咲かせた人はたくさんいます。
(中略)
3年間、苦しい思いをして練習してきたことは、確実に心と体を鍛えている。絶対、無駄にはなりません。大切なことを目標に挑戦すること。どんなに弱いチームでも、1試合で必ず3回はチャンスがある。人生にも3回はチャンスがあるから、自分を磨き続けることです。その時に準備ができていれば、大輪の花が咲きます」
朝礼でも、入学式でも、講演会でも、私はよくこの話をしています。

サッカーにおいての「いい指導者」は、技術、戦術、体力、精神力を教えることができる人です。でも、全国の頂点に立つには、これらにプラスアルファの力がないとできません。私が見てきたなかで、「すごい指導者」は人間性を育成できる力を持っています。
高校時代は、人間の基礎を磨く時期です。知育、体育、徳育のことですが、特に徳育、言い換えれば、人間教育が大切になります。
基本は「挨拶」「返事」「後始末」がきちんとできることです。たとえば剣道や柔道にはそれが組み込まれていますが、ややもすると、いまの日本では失われつつあることです。たとえば、グラウンドにサッカー部の練習を見に来る人がいれば椅子を持っていく。体育館だったらお客様にスリッパを出す。挨拶するときには立ち止まってお辞儀する。どれも、家庭でしつけているような基本的なことです。
(中略)
私の経験上、人間教育のできているチームは、「ここぞ」という競り合いに強い。サッカーだけ教えていても、人間教育のできていない指導者は二流だと思います。
また、指導者は自分を律するところが必要です。

大学案内研究:明治学院大学

明治学院大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
「ヘボン式ローマ字」で有名なJ・C・ヘボン夫妻が、1863年に横浜に開設したヘボン塾が母体となっている。1880年に東京築地に移転され、1886年に明治学院と改称されている。作家島崎藤村は当時の明治学院の第一期卒業生であり、同校の校歌も作詞している。
1949年、文経学部英文学科・社会学科・経済学科からなる4年制大学がスタートしている。現在は、英文学科・フランス文学科・芸術学科からなる文学部、経済学科・経営学科・国際経営学科からなる経済学部、社会学科と社会福祉学科からなる社会学部、法律学科・消費情報環境法学科・政治学科からなる法学部、国際学科と国際キャリア学科からなる国際学部、心理学科と教育発達学科からなる心理学部の計6学部15学科で構成されている。

正直、パンフレットを読んでも大学の魅力があまり伝わってこない。外部の印刷業者のフォーマットにただ大学の情報を入れただけのような内容である。英語に力を入れているという話であるが、特段英語教育の紹介もなく、少人数制ゼミの紹介もない。学問の深みに誘うような記述もなく、留学や大学院の紹介も極めて簡素である。モデル活動と両立しているイケメン学生やおしゃれな女子学生が登場するが、サークルや部活動に一生懸命な学生はおらず、大学の環境や制度を誉めるだけで、学生の姿が見えてこない。
また、共通科目に「ボランティア学」や「ボランティア実習」「ボランティア特別研究」といった科目があるが、ボランティアに参加すれば単位が認定されるのであろうか。
4ページずつ全15学科の紹介が続くが、どれも似たり寄ったりで面白味がない。また、どの学部学科のカリキュラムを見ても、就活に取り組みやすいように、大学4年生はほぼ卒論とゼミだけしか置かれていない。

1学年3000名弱というかなりの規模であるが、国際学部を除いて、1・2年生は横浜戸塚キャンパスで、3・4年生は東京白金キャンパスで学ぶ完全な分離キャンパス体制を敷いている。そのためサークル活動も全般的に低調である。
女子学生が多く、白金のおしゃれなイメージに包まれた大学であるが、パンフレットを読む限りでは、カリキュラムや学生の自主活動などについは偏差値50に満たない日東駒専より下の大学と大差ないと言わざるを得ない。

パンフレットを読む限りの印象を書いたが、明治学院の代々の学長の平和に対する姿勢は注目に値する。