月別アーカイブ: 2013年9月

パンフレット研究:神奈川歯科大学

神奈川歯科大学・神奈川歯科大学短期大学部のパンフレット(2014年度版)を読む。
1910年東京神田に創立した東京女子歯科医学講習所を起源とする。1934年日本女子歯科医学専門学校に改称し、大田区に移転している。そして、1950年に日本女子歯科厚生学校が開学し、わが国初の歯科衛生士養成を始めている。1963年に横須賀に移転し、4年制大学が開設されている。短大の方は国文科や商経学科などの開設廃止を繰り返し、現在では、同じ大学の敷地内に歯科衛生学科と看護学科を擁している。

歯学部全体が長期低落傾向にあり、神奈川歯科大学でもAO・推薦・一般・センター利用・編入と数多くの入試が行われているが、すべて全入状態である。入試要項だけを読むと、どこのFランク大学なのかと勘違いしてしまう。2014年度より学費が3055万円から2700万円に減額されている。成績上位3位までは1300万円近くまで免除されるが、あまり現実的とは言えないであろう。

保護者向けの資料には「歯科医師の将来性」というページに、歯科医師の高齢化が進んでおり、2008年現在9万7千名いた歯科医師が2018年には約7万人になるという試算が掲載されている。説明の最後に、「これから入学されるお子様が卒業し、独立・開業する頃には歯科医師不足に陥っている可能性があります」と希望を持たせるような記載がある。しかし、歯科医師が「独立・開業」するのは大学を卒業して早くても数年後のことであり、10年以上先の話である。10年先に数千万円に及ぶ先行投資が回収できれば良いが、一般の人は尻込みしてしまうであろう。

しかし、パンフレットの方は研究内容も、学生の様子もよく伝わってくるよくできたものであった。学生は美女美男子ばかりで、どこかのモデルかと見紛うようであったが、ほぼ全ページにわたって教員や学生の顔写真入りの紹介があるのはよい。充実した施設やクラブ・サークルの様子も伝わってくる。
歯科医師の就職や待遇が改善されれば、再び脚光を浴びてくる大学になるに違いない。資料の予想通りであれば、10年後には大学の難易度も上がってくるであろう。

日曜日、ぶらぶらと買い物

 

妻が眼鏡を新調したいということだったので、家族を連れて幸手のジョイフルホンダへ出かけた。途中杉戸の国道4号沿いに開店した東京インテリア家具に立ち寄った。広い敷地にベッドやタンスが展示してあった。歩くスペースもゆったりとしており、喫茶店も設けられていて、寛いで買い物を楽しむことができそうだ。
その後、ジョイフルホンダ、幸手ニコパに寄って帰ってきた。ホームセンター、ダイソー、ユニクロと、暇を持て余している日曜日のおじさんの生態そのままの一日であった。

パンフレット研究:横浜薬科大学

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横浜薬科大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
教育界ではいろいろと噂の絶えない福岡に拠点を置く「都筑学園グループ」が、埼玉県伊奈町に開設した日本薬科大学に続いて、2006年に横浜市戸塚区に開設した大学である。交通の不便さと相俟って閉園した「横浜ドリームランド」の跡地を活用しており、21階建ての展望台付きのホテルがそのまま図書館棟になっており、大学のシンボルとなっている。また、学長には、人寄せパンダとしてノーベル物理賞を受賞した江崎玲於奈教授を据えている。パンフレットの表紙が上手く大学の戦略を表している。

6年制の薬学部ではあまり学科は置かれないが、横浜薬科大学では薬剤師育成も含め、「漢方をコアに東洋医療に精通した薬剤師を育てる漢方薬学科」と「一人ひとりの患者と向き合いながら治療をサポートできる人材を育成する臨床薬学科」「食費・運動・環境・感染症にいたるまで、セルフメディケーションを幅広く学ぶ健康薬学科」の3学科体制を敷いている。学科ごとにイメージカラーを用いながら学科ごとの特性を打ち出しているが、3学科共通科目が大半であり、漢方も臨床も健康も全て他の薬学部には普通に設置されている科目である。大した意味もなく学科を分けるというのは、数十年前に自動車販売で用いられた姉妹車戦略を彷彿させる。トヨタ自動車が、マークⅡ・チェイサー・クレスタとエンブレムやボディカラーの違いだけで中身は同じ車を競合させて販売を伸ばしたのと同じような商法である。

パンフレット自体は、学生の様子も、教員の紹介も網羅されて、講義内容や試験対策、薬剤師の仕事についても触れられており、分かりやすい内容である。冒頭の紹介文の「薬剤師に必要なものは、(中略)薬を通じてみんなを幸せにしたいという気持ちだったり、医師や看護師とのコミュニケーション能力だったり、患者さんへのやさしい気配りだったりします。だから横浜薬科大学は、学生さんを学力や偏差値だけでは計りません。」という一節が大学の置かれている状況を如実に表している。物理や化学、生物、数学の4科目について基礎学力講座や未習得科目補習教育が行われているのだが、中退率や留年率が高く、国家試験合格率もランキング下位に留まっている。

2012年度の大学基準協会の大学評価において、大学基準に適合していないとの評価を下されている。その評価理由は大学基準協会のホームページで次のように公開されている。

(1)「教員・教員組織」について、講師以上の専任教員の選考が規程通り行われていないなど、教員人事の透明性・公平性に大きな問題がみられること。
(2)「教育内容・方法・成果」について、編入学生の既修得単位認定の上限設定が規程等に定められておらず、単位の認定についても、該当する科目の担当教員に委ねられていること。
(3)「学生の受け入れ」について、学生の受け入れ方針とは異なる考え方に基づき、また修学能力の判定も規程に定められた手続きを経ずに学生を受け入れ、多くの留年者・退学者を生み出す要因となっていること、また、過去5年間の入学定員に対する入学者数比率の平均が薬学部健康薬学科と漢方薬学科で低く、臨床薬学科では非常に高いなど、定員管理に問題がみられること。
(4)「内部質保証」について、問題を改善していくための体制・システムが整備されておらず、十分な自己点検・評価活動が実施されていないことに加え、提出資料に事実と異なる記載があることから、真摯に自己点検・評価を行って質を保証しようとする姿勢が見えないこと。

いくら名前のある法人が既存の施設を活用するとはいえ、果たして既に飽和状態の首都圏に2つの薬科大学が必要だったのであろうか。田中眞紀子元文科大臣が指摘したように、大学許認可行政の不手際であろう。校舎が完成して、教員を確保してから認可申請するという手順そのものが、無駄なハコモノを生む温床である。当時の文科行政に対する批判は現在どのように生かされているのであろうか。

パンフレット研究:松蔭大学

松蔭大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
聞いたことのない大学であったが、学園法人の歴史はまあまあ古い。1941年に下北沢に創立した松蔭女学校を母体とし、中学・高校・幼稚園・短大・大学と経営の幅を広げている。バブル経済と団塊ジュニアブームに乗ったのであろうか、1985年に神奈川県厚木市森の里に松蔭女子短期大学が開学している。しかし、青山学院同様、森の里では学生が集まらなかったのであろう、2000年にビジネスマネジメント学科と異文化コミュニケーション学科からなる経営文化学部からなる松蔭女子大学に転換している。しかし、それでも学生が全く集まらなかったようだ。当時の定員充足率は20%ほどである。そのため、2004年に共学の松蔭大学に名称を変更し2学部体制に改めている。少しは学生が集まるようになったのであろうか、2006年に大学院が開設され、2009年に観光学部が増設され、2013年現在、金融経済学科、経営法学科、ビジネスマネジメント学科の3学科からなる経営文化学部、日本文化コミュニケーション学科、異文化コミュニケーション学科、生活心理学科の3学科からなるコミュニケーション文化学部、観光文化学科、メディア情報文化学科からなる観光メディア文化学部の3学部8学科体制となっている。

学生集めは相変わらず苦労しているようで、500名弱の定員に対して、2013年現在の新入生は200名に留まっている。そのため入試の回数は多く、推薦入試3回、AO入試は8月から3月まで随時ず〜っと行っており、加えて一般入試4回、センター利用入試が3回である。これに、社会人特別入試5回、外国人留学生特別入試3回が付け加えられる。結果は非公表であるが、おそらくは全種全回において1.00倍であろう。さらに、3年次編入試験も推薦2回、一般2回の計4回も実施される。ここまでくると、果たして入試という形態をとる必要があるのだろうか。試験日の前日午後3時まで出願を受け付け、面接や小論、現代文試験で形を取り繕い、次の日に発表である。入学書類を随時受け付けている専門学校の方がよっぽどすっきりしている。

大學関係者には申し訳ないが、パンフレットを読む限り、定員割れ大学にはやはりそれなりの理由が存在するのであろう。これほど読みにくいパンフレットは初めてであった。松蔭大学は3学部8学科構成なのだが、8学科の紹介ページ全てに全学共通科目のページが挿入されている。つまり全く同じ内容の見開き2ページにわたるカリキュラム表が8枚も掲載されているのである。ここだけで如実に大学の破綻ぶりを示している。また、こまかく学科編成しているわりには必修科目は10単位ほどしかない。異文化コミュニケーション学科に至っては、大半が半期履修ながら、100科目以上ある専門科目群の中で、必修科目は2科目しかない。これでは系統的な指導は不可能であろう。選択の幅が多数あるように見えるが、入学者200名に対して果たして選択通り開講できているのであろうか、疑問は払拭し得ない。

1・2年生は全学部において基礎ゼミを必修とし、吉田松蔭論とホスピタリティ論を学ぶのだが、その中身は明らかにされていない。また、111ページの分量があるパンフレットなのだが、教員の名前も写真の紹介もない。就職や資格取得に特段の力を注いでいるような記載もない。
系列校から特待生を引っ張ってくるのであろうか、女子バスケットボール部と女子バレーボール部の2つ部だけが関東リーグ1部の上位を争っている。
1980年代に、どんどん郊外へと広がっていったベッドタウン生まれの団塊ジュニア世代をターゲットに短大を作ったのだが、潰すに潰せず、だらだらと拡張路線を歩んだのだが、中身は依然短大のままであり、形だけ大学っぽくなった張りぼてに過ぎない。愛国学園大学ほどではないが、10年以内に消えてしまいそうな大学である。

場所が辺鄙とはいえ、せっかく校舎もスクールバスもグラウンドもあるので、明確なビジョンを持って「知行合一」でカリキュラムやキャリア支援のあり方を抜本的に変えていけば、再生の道はあるはずである。いっそのこと森の里を離れて成功した青山学院大学を見習って、年寄りな教授陣がいなくなった後、下北沢に徹底した外国語、コンピュータを柱にした経営観光学部一本の大学に特化すれば生き残りのチャンスがあるかもしれない。

パンフレット研究:愛国学園大学

愛国学園大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
1962年に千葉県四街道市に開設された愛国学園女子短期大学家政科を母体とし、1998年に人間文化学部1学部1学科の女子4年制大学として出発している。しかし、開設された年から定員割れが続き、入学定員の充足率が日本一低いことで有名なFランク大学の常連校である。入学者定員100名に対して、2010年度は16名、2011年度は18名、2012年度は25名と厳しい状況が続いている。閉学して当然なのであるが、法人全体で高校を3校、短大1校、保育専門学校1校、保育園1校を経営しているので、息も絶え絶え何とか延命している状況である。なお、校舎の方も付属高校と繋がっており、図書館やグラウンド、体育館を、LL教室を高校と共有して利用している。

2012年度の在籍者65名に対して、専任教員17名という徹底した少人数教育は自慢できるであろう。心理学や文化学について学ぶ人間文化コースと、福祉という名前のついた科目を学ぶ生活福祉コース、名前だけ派仰々しい科目を学ぶ情報ビジネスコースの3コースが設置されている。本当に65人という在籍に対して上記の科目が開講されているのであろうか。疑問を通り越して下世話な興味を禁じ得ない。人間文化コースでは、認定心理士と上級秘書士、その他のコースでは上級秘書士と上級情報処理士の2つの資格が取得できる。

パンフレットを全部読んでみたのだが、どのコースも全くカリキュラムの体をなしていない。「リベラルアーツ型の教育の志向と、専門性を持った教養人の育成」を掲げてはいるのだが、基礎から学力を積み上げていくという発想が全くなく、ただ適当に科目を揃えただけで済ましてしまっている。入学者数が尋常ではなく少ないので致し方ないのであろうが、専門学校を見習って、少しでも就職の武器になるような資格取得に向けたカリキュラムに変えていかないと、3年を待たずに潰れてしまうであろう。
いずれにせよ、学生が4学年で65人しかいないというのは、いくらでも変わっていく余地があるということである。若い優秀な先生も在籍しているので、経営陣との軋轢はあろうが、是非抜本的な改革を期待したいところである。