宇都宮共和大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
音楽科を有する宇都宮短期大学と進学校として知られる宇都宮短期大学付属高等学校・中学校を運営する学校法人が、何を間違えたか1999年に那須塩原駅から6キロも離れたど田舎に大学を設置したことから大学の悲劇の歴史が始まる。作られた那須大学都市経済学部であるば、開学当初から全く学生が集まらず、場所が悪いと判断したのか、2006年に名称を変更し、宇都宮駅近くにキャンパスを移し、シティライフ学部として再出発している。しかし、これまた設置当初から見向きもされず、2013年度の入学生は定員100名に対し33名という始末である。そこで、理事会も策を練ったのであろうか、比較的上手くいっていた短期大学幼児幼児福祉専攻を、2011年より4年制の子ども生活学部に格上げしている。しかし取れる資格は同じで、2年制のカリキュラムをただ伸ばしただけの中身の薄い内容となっている。これまた受験生から敬遠され、収容定員300名に対し148名しか在籍してない。音楽科と人間福祉科を有する短期大学の方も大きく定員割れを起こしている。収支計算署を見ると、法人全体であるが、2011年度に5億6千万、2012年度は12億1千万の資産売却を行っている。付属の高校に2300名を越える生徒がいるので、法人全体で何とか維持しているのであろうが、大学単体の経営判断が鈍るのではないだろうか。東京大学経済学部を卒業し日本興業銀行に長く勤務していた現学長の舵取りに任せられるのだろう。
いずれにせよ、大規模な私立高校を経営する法人が安易に大学を作った失敗例として参考になるところは多いであろう。
パンフレットのシティライフ学部のページをじっくりと読んだのだが、いったい何を学ぶ学部なのか、読めば読むほど分からなくなる。在籍する学生が少ないので、当該の学生の実態に合わせて大学の方向を柔軟に変えているのであろう。経済学をベースに宇都宮という町のフィールドワークを重視しているのだが、専門科目と基礎科目の違いも明確でなく、体系化された学びの方向もない。キャリア支援も就職状況も明確に示されない。ただあるのは入学金免除や授業料減免、各種資格試験の受験料を支援などお金の話だけである。果たして今年度入学生33名のうち、日本人はどれくらいの割合いるのであろうか。およそ日本人向けの内容とは思えない。
「共和大はやりたいことになんでも取り組める環境」という言葉がこの大学をよく表している。33名しかいない入学生に対して、中高社会公民の教職課程を揃え、資格取得講座さえ設けている。
子ども生活学部の方はさすがにカリキュラムも体系だっているが、2年制短大のカリキュラムとほとんど代わり映えしない。第2外国語もあるのだが、1年間だけしか開講されていない。開学して3年目なので、まだ卒業生はいないが、短期大学時代のの就職率(平成23年度98%)を維持するのは難しいであろう。
8月1日から3月中旬まで延々とAO入試を行い、ほぼ全入の入試を繰り返すのは教職員にとっても面倒のことであろう。こういう大学を見るにつけ、安易に大学を増やし続けた文科省の責任問題とならないのであろうか。こんな大学に法人全体で6億円を越える税金が投入されているのである。マスコミで叩かれるのも時間の問題であろう。