角岡伸彦『被差別部落の青春』(講談社 1999)を読む。
ちょうど今週、人権教育で同和問題を扱ったので、手に取ってみた。
著者自身が被差別部落出身ということもあり、100人以上へのインタビュー記事や、実際の食肉加工工場でのアルバイトなど、部落問題の現状を分かりやすく描いている。同和問題というと、歴史的な流れや狭山事件などの戦後の差別事件、同対法や地対法の行政の働き、そして部落問題を含めた差別の根絶という3本柱を学ぶという意味合いが強かった。この本では、部落での結婚や、部落での生活や就労、そして食肉加工工場、学校現場での同和教育の取り組みといった同和問題のメインタームを扱いながらも、部落出身者内における部落に対する意識のズレや、家族内の認識のズレ、世代のズレを丁寧に伝えようとしている。
著者は、あとがきの中で、差別の厳しさや被差別の実態ばかりを強調する悲観論と、逆に差別はすでになくなって同和行政の行き過ぎを執拗に強調する楽観論の間の現状を描いてみたいと述べている。