第126回芥川賞受賞作、長嶋有『猛スピードで母は』(文藝春秋社 2002)を読む。
表題作の他、第92回文學界新人賞を受賞した『サイドカーに犬』も収められている。
『猛スピード〜』の方は、子どもの目線から一人で生きて行こうとする力強い母の姿を、『サイドカー〜』の方は、父の新しい恋人である女性の堂々とした生き方が描かれている。どちらも正直なところ、内容もさることながら、印象に残る場面やフレーズもなかった。
先日、石原慎太郎氏が芥川賞選考委員を辞任したが、その時の辞任の言葉である「いつか若いやつが出てきて、足をすくわれる戦慄を期待していたが、刺激にならない」という捨て台詞を思い出した。
社会や学校と反りの合わない母子家庭の孤独、そして、その孤独を無にしようとする心の強さが一応描かれるのだが、作品全体の印象は薄いと言わざるを得ない。
『猛スピードで母は』
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